《夢が醒める前に》
果たしてこれは、夢なのか。
そうでないのか。
わからない。
わからないが、ずっとここに居たい。
ここに居させてはくれないだろうか。
どんなに離れがたくても、
夢はいつか醒めてしまうものだし
時が止まることはない。
それでも、どうか。
今だけは。
この熱が醒めてしまわぬように、
ぬくもりを感じさせて。
《怖がり》
人間は、知らないことが恐怖になるのだという。
それならば納得だ。
僕らは生まれた時、まだ何も知らないんだから。
怖くて当然なんだ。
新しいことをするたび、怖くなるのは当然であり、
別に悪いことじゃない。
僕らはこれから、
何を知って、何を知らないままなんだろう。
知った気になっても、この世界の一欠片しか知り得ていないのだろう。
全てを知りたい。いや、知りたくない。
知らないままでいたい。
少しスリルがあったほうが、人生楽しいじゃないか。
僕はこれからも無知な赤ん坊のふりをして、
まだ人生と旅をしていたい。
《星が溢れる》
きらきらと。
自分の手から溢れていってしまいそうだ。
大切なものが、大切にしていたものが。
手のひらから、するすると。
星のように瞬いていたのに。
輝いて、彩りを与えてくれたのに。
どうしてなんだろう。
溢れる、溢れる。
どうか行かないで。
僕を置いて、遠い所へ行かないで。
僕が見つけた輝きを、奪っていかないで。
《過ぎ去った日々》
季節は移ろぐ。
そうやって幾星霜の時が流れた。
なのにどうしてだろう。
僕の心の穴はぽっかり空いたままだ。
何がいけなかったのだろうか。
出会いを見つけて、
別れを惜しんで、
また出会う。
そう繰り返してきただけなのに。
そう繰り返してきたからだろうか。
引き止められたらよかったのか。
手を振るわけではなく、
腕を引っ張って、
泣きじゃくって、
行かないでと言えたなら。
僕の隣には誰か居ただろうか。
過ぎ去った日々はもう戻らないのに
願ってしまうばかりだ。
また誰かが僕を見つけてくれることに。
また誰かが僕に手を差し伸べてくれることに。
そうしたら今度は
離れないようにしっかり繋ぐからさ。って。
そうやってずっと、
願ってばかりだ。
《絆》
ひいたり、くっついたり。
忙しいことだ。
僕たちは糸のように、
好きな人とは結んで
合わない人とは縁を切る。
引き契れてしまうこともあれば、
がんじがらめになってしまうこともある。
それでも、僕らは器用な生きものだから。
離れてしまった糸どうしも
また結び直すことができるんだ。
だから心配しないで。
自分の思うままに生きていけばいい。