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8/28/2023, 12:46:12 PM

8/28 お題「突然の君の訪問。」

「来ちゃった♪」
 窓を叩いたのは、かつてオレを異世界に召喚した巫女。
「いやいやいやいや、何でだよ! そっちの世界すっかり平和になっただろ?! ていうか何でこっち来てんだよ!!」
「うん、まあ、それはそうなんだけど。今度はちょっとまた別の事情があって」
「何だよ」
「今度はこっちの世界がヤバい」
「……………は?」
 目を点にするオレに、巫女は手早く説明する。
「…じゃあ、こっちの世界を救う天使ってのが…」
「そう、私みたい。で、今儀式から逃げてきたんだけど」
「逃げて来んなよ」
「とにかく手伝ってほしいの。お願い、"勇者さま"」
「…ったく」
 オレはあっちの世界で手に入れた装備を身にまとい、魔力を開放した。
「しょうがねえな。行くぜ!」

(所要時間:9分)

8/27/2023, 11:20:00 AM

8/27 お題「雨に佇む」

 しとしとと雨が降り続きます。
 自分の周りには色とりどりの傘が、時に待ち、時に近づき、時に連れ立ち、時に別れて行きます。
 その中に、傘を持たない人間が一人。さっきからずっと、自分の背後に身をもたせかけています。
 おや。けれど、濡れていない様子。これはあれでしょうか、人間ではなく―――
『お前には私が見えるの?』
 ええ、見えますが。何か、思い残した事でもおありですか?
『ここで待ち合わせしていたんだ。でも、急いでいたら事故に遭ってしまって』
 それは悲しい事ですね。待ち合わせのお相手もさぞかし嘆かれたでしょう。
『うん。…話し相手になってくれてありがとう。もう行くね』
 ええ、ええ。今度はお気をつけて。
『そうだね。ありがとう、ハチ公』

(所要時間:12分)

8/26/2023, 1:11:00 PM

8/26 お題「私の日記帳」

 引き出しを開け、青いノートを取り出す。私の生活をつぶさに記してきたノート。
 そのノートに、今日書くべきことがある。思い出しただけで心が震え、睫毛に涙の雫が育つ。
 憧れの先輩に、彼女がいた。告白したわけじゃないから振られてない。でもこれは失恋。間違いなく、失恋。
 昨日まで綴っていた熱い想いに、悲しい悲しい終止符を打たなければならない。
 ノートを開く。昨日書いた長い日記の後に―――

 スーパーロボ・オージャキングのラクガキ。

「ターケールーーーー!!!」
 私はノートを持って弟の部屋に殴り込んだ。

(所要時間:7分)

8/25/2023, 1:28:50 PM

8/25 お題「向かい合わせ」

 小さなご主人様がおっしゃったのです。
「どうして並んでるの? お顔が見えないよ」と。

 そうして、私は彼女の顔を正面から見据えることになりました。
 箱の中にいる時は顔を丁寧に紙に包まれ、外に出る際は先程の通り横に並んでおりますから、こんなに間近でしげしげと眺めることはそうそうありません。卵のような輪郭に白い肌、優しく細められた目。すっと通った鼻、小さな唇。やはり、美しい方であらせられます。
 こんなに美しい方がずっと隣にいらっしゃることに、私は改めて幸せを感じます。

「…ん? 何でお内裏様とお雛様向かい合ってるの?」
「だって、並んでたら二人とも顔が見えないもん」
「そ、そっかー」
「あれ? なんか、お雛様もお内裏様も赤くなっちゃってる?」
「ほんとだ。うーん、右大臣みたいね…」

(所要時間:10分)

8/24/2023, 11:48:50 PM

8/24 お題「やるせない気持ち」

 やり場のない気持ちを、とりあえず僕は「気持ち箱」にしまう。
 気持ち箱にはいろんな気持ちがしまわれている。共通するのは、どれも「やるせない気持ち」。やり場に困るから、箱に入れておく。
 毎月月末に、僕は気持ち箱を開ける。
 中身は、溶けて消えたものが大半。時間が解決してくれた。
 そして、そのまま残っているものが少し。これは自分にとって重要なことに関する問題だから、考える材料にする。
 それから、あとは―――決まり切った話だろう?
 最後に箱の中に残ってるのは、「希望」って。

(所要時間:7分)

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