頁。

Open App
2/20/2024, 9:33:05 PM

「お前の同情なんか要らねーよ」

 そう言って突き飛ばした躰は
 驚くほどに薄く、遠くに跳んだ。


▶同情 #63

2/11/2024, 12:42:44 PM

 アイツが消えたこの場所で
 俺もいつか消えてやるんだ


▶この場所で #62

2/7/2024, 10:20:00 PM

 君はどこにも書けないことをした。
 それは、日記にも書けないことで
 インターネットにも書けないこと。
 ぼくと君、二人だけの秘密。
 絶対に内緒にしなくちゃいけない。

 ぼくは誰にも言えないことをした。
 それは、大人にも話せないことで
 笑いの肥やしにすらならないこと。
 ぼくと君、二人きりの秘密。
 他のひとは知らなくていいからね。

 なのでぼくは
 ひとまず日記にしたためることにした。
 君は
 きっと誰かに相談しようとするだろう。

 それでいいのかもしれない。
 それが正解なのかもしれない。
 だけど、──嗚呼、悔しいなあ。

 それはきっと、同じ秘密を抱えるのに
 相応しくないと思われること。

 だからぼくは、日記に記す。
 忘れられない為に、したためる。

 今日もぼくは机の鍵を開けて
 古めかしいハードカバーの日記帳を取り出して
 愛用のペンを持つ。
 さて、何から書こうかな。君との秘密を。


▶どこにも書けないこと #61

2/6/2024, 1:30:45 PM

 細い針のしとやかな声。コッコッ。
 その次に細い針はカチ、コチ、カチン
 最後にいちばん太い針がカツンと踊る。

 軽やかなタップダンスみたいな音音。

 くらぁい夜闇の中に染み渡るそれらは
 私のたいせつな子守唄。


▶時計の針 #60

2/2/2024, 1:56:31 PM

 人間は皆、広いようで狭いこの世界の歯車のひとつでしかないのだと知った。あんなに無下にしていた存在にすら、ひとたび呑まれてしまえば何の抵抗もなく事切れてしまう、小さくてか弱い歯車のひとつ。
(ああ、それでも……)
 貴方にはいつまでも私を憶えていて欲しい。名前を、声を、言葉のすべてを忘れないで、心の隅でもいいから貴方の中のどこかで平穏に過ごしたい。唯そう願っていた。
 だけど、記憶というものはひどく無情で。決して忘れないと誓ってくれた貴方も次第に私を忘れていく。声から始まり、表情、手癖口癖、好み──今では名前もうすらぼんやりとしている頃だと思う。
 毎年、勿忘草の花を持って墓参りに来ることですらも、いつかは忘れてしまうでしょう。
 それは……きっと、寂しいだろうなぁ。
 未だ貴方の記憶のどこかに私が居るなら、どうか今すぐ勿忘草を一本だけ持ってお墓に来て。そして私にサヨナラを言わせて頂戴な。


▶勿忘草 #59

Next