荒廃した大地に降り注ぐ光の雨。
あたたかな橙と、迫りくる八面玲瓏な夜の闇。
なんだか堪らなくなって、
消えゆく命をひとかけら吐き出した。
死して尚、この世界は美しい。
大切にしてきた宝物。
それはあなたとの思い出のかけら。
こんなに大切に想っていた。
きっとあなたも、悪くないと思ってくれていた。
このまま二人幸せな今が続くと信じていたの。
なのに、どうして。
どうして、私を裏切ったの?
▶どうして #53
空に浮かぶしろくてちいさな球体に、ぽっかりと空いたおおきな穴。うまく中心を捉えきれなかったらしいそれは、しかし大きな影響を及ぼして、その日の球体はいつもとはまったく違う、変な形になってしまう。ぼくは、そんな球体が大好きだった。
父さんや父さんの友達はこりゃ変だ、とムリヤリ矯正しようとしてきたけど、見れば見るほど胸が高鳴るのを止められない。つまりは何も変わらなかった。あんなものに屈するぼくではないのだ、へんっ。
ささやかな丘に建つちいさな小屋。心安らぐぼくの居場所だ。そんな屋根にのぼって、ぼくは今日も空を見上げる。
みんなの嫌いな黒い歪み。
ぼくの大好きな月の窪み。
何度考えても、なんでみんながアレを好きになれないのか、ぼくには到底わからなかった。
▶三日月 #52
「幸せってなに?」
「いきなり哲学吹っ掛けてくるのやめてくれる? 私が洗ってるこの食器は誰のだと思ってんの」
「そんなの今はどうでも良くて」
「良くないよ? 今すぐ代わってやろうか、あ?」
「いいから。きみにとって幸せってなに?」
「よし貴様こっちに来い、今すぐにだ」
「……で、洗い終わったけど」
「ありがと、すごい助かる~。なんなら明日からもやってくれない?」
「いいけど、その代わりさっきの質問に答えて」
「さっきの? ……ああ、幸せってなに、だっけ」
「そうそれ」
「う~ん……。こうしてゆっくりコタツでぬくぬくすることかなぁ」
「そっか」
「そう」
「ふーん」
「……あんたは?」
「おれ? おれも家でぬくぬく暖まることだよ~」
「へえ」
「きみと一緒に、っていう条件下での話だけど」
「あっそ」
「うん」
「……」
「……へへ」
「なに、気持ち悪い」
「ああうん、ごめん。こうして照れてるきみを見れるのもおれだけだと思うと幸せでつい、ね」
「……あほらし」
▶幸せとは #51
私にどんな未来が待ち受けているのか私自身もわからないし、あなたの努力が今後どう実を結ぶかなんて殊更皆目検討もつかないけれど。
一年間お疲れ様でした。
皆様、どうか良いお年を。