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 空に浮かぶしろくてちいさな球体に、ぽっかりと空いたおおきな穴。うまく中心を捉えきれなかったらしいそれは、しかし大きな影響を及ぼして、その日の球体はいつもとはまったく違う、変な形になってしまう。ぼくは、そんな球体が大好きだった。
 父さんや父さんの友達はこりゃ変だ、とムリヤリ矯正しようとしてきたけど、見れば見るほど胸が高鳴るのを止められない。つまりは何も変わらなかった。あんなものに屈するぼくではないのだ、へんっ。

 ささやかな丘に建つちいさな小屋。心安らぐぼくの居場所だ。そんな屋根にのぼって、ぼくは今日も空を見上げる。
 みんなの嫌いな黒い歪み。
 ぼくの大好きな月の窪み。
 何度考えても、なんでみんながアレを好きになれないのか、ぼくには到底わからなかった。


▶三日月 #52

1/9/2024, 10:48:54 AM