星のひらめき
ひとみは瞬く
怪しくつややかな声
紅唇が囁いた
「この光は終を知らぬぞ」
▶きらめき #5
命の灯火はきっかけさえあれば
わりとすぐに消えてしまうけれど、
心の灯火というやつは
そう簡単にゃ消えてくれないらしい。
▶心の灯火 #4
LINEが開けないスマホを手に入れた。他のアプリは難なくすべて開けるのに、どうしてもLINEだけが開けないらしい。
そんなものをどうやって手に入れたのか?
貴女なら開けると思うから、と持ち主の家族から手渡されたんだよ。なにより貴女に持っていてほしい、ってね。
あの時はすごく感激して、「私が絶対に開いてみせる!」って意気込んでた。開けない原因もわかっていたし、どうにかできると信じていた。
……うん、最初はそう思ってた。
なのに! なんで! 開かないっ!
昔に本人から教わったパスワードを何通りも試してるけど、どれも反応ないんですけど。そろそろ極太な私の心も折れそうだよパトラ◯シュ。
それに、履歴全部消しといて~、なんて言ってた癖にメモのひとつも残さないなんて……ほんと信じらんない。それが頼んだ側の対応か?
あーもうっ、ほんと嫌んなっちゃう!
匙のようにスマホをベッドに放り投げ、次いで自身もベッドに飛び込むと、スプリングが音を立てながら私を支えた。
スマホは手を伸ばせば届く距離にあったので、もう一度、今度はまた違うパスワードを打ち込んでみる。
『1020』
すると『パスワードが違います。三時間後にやり直してください』という注意の文字が踊り出た。
うーん、これも駄目なのか。
あれも違う、それも違う、これも違う、って。もう覚えてる分は全部試したのにどれも引っ掛からないとは。
ゔ~、本当、あの子ってば……。
「なんでこんな面倒事を残して逝っちゃうかなあ」
これじゃあ、いつまで経っても顔向けできない侭じゃんか。
▶開けないLINE #3
僕はきみを愛することはできないけど、他のなによりもきみを優先しよう。大切に守り、慈しみ、そばに居続けよう。
だから、こんな不完全な僕をあいしてほしい。なんて。
そんな自分勝手な望み、きみを前にして言えるわけがなかった。
▶不完全な僕 #2
甘い香りがした。
「あれ、なんか今日はいつもと違う匂いだ」
「ふっふーん! よくぞ聞いてくれた!」
彼女は、今日の私はいつもと違うんだぞ!と自慢げに胸を張る。
その動作ひとつで、ふわりと香る匂い。いつもの彼女とは違う匂い。
「今日はね、香水を付けてみました」
どうやら、調香師の元へと赴いてオーダーメイドで作ってもらったらしい。
何故わざわざ……とか、高かっただろうに……とは思うけど、今日のために準備してくれたことが只純粋にうれしかった。
「だって、特別な日だからさ。今日くらいは許されるかな~って」
「あはは、そうだね」
なんたって、今日は僕たちの初デートの日だ。
「あーあ、きみも香水付けてみたらいいのに。匂いが違うと雰囲気も変わるんだって、調香師さんも言ってたよ~」
「それ、いま言わなきゃダメ?」
もっと早くに言ってくれれば僕もちゃんと準備できたよ? と髪をいじくりながら唇を尖らせる。そんな僕を見て、彼女はひどく可笑しそうに笑った。
ああ、僕はしあわせものだなぁ。
「仕方ないなぁー、次行くときは一緒に行こっか。きみも絶対に楽しめるよ!」
「そう? ……じゃあ期待しとこうかな」
「うんうん!」
それじゃあ行こうか。
僕たちは、柔らかくしっかりと手を繋いで、少し歩いた先にある映画館を目指した。
▶香水 #1