いちばんになりたかった。
いちばんになろうとした。
いちばんになったつもりだった。
「おれのことしりすぎてるからもうやだ」
かっこつけてる裏側も全部知ってあんたを包むつもりだった。
包めないくらいあんたはとっくに壊れかけてた。
ずっとみていた。
それは自分が見たい場所ばかりだったって、遠ざけられて気づいた。
2024/04/09 誰よりも、ずっと
「すき」
世界中の人が何千万回とこの日に言ってるだろうと思う。
だけどそれにのっからないと言えない。みっともなくても言いたい。
そういうのがあるって、あんたに会って初めて知った、
2024/04/01 エイプリル・フール
「世界の標語?」
「いい世界だね」
「ドラマのタイトル?」
「ありそうでなさ…いや、ある?」
手元のスマホで検索し始める横顔を眺めながら考える。愛と平和。あるか?あるならどこ?
「あ、布団」
「布団が愛と平和?」
「うんそう。今度紹介しようか?」
遊ぶような軽口だったのにあいつの顔がみるみる赤くなっ、あ、ちがう、ちげーから、ちげーよばか。
2024/03/09 愛と平和
卒業したら会えなくなるのかな
「まず卒業できるかを考えた方がいいよ」
「日数はたりてるはず」
「教師の呼び出しと補習はでないとヤバいよ」
「サンカイニイッカイはでてたはず」
卒業しないかもしれないな
卒業できちゃったら、約束なしでもこの公園で会えたりしないかな
すぐに繋がれる『いま』の時代に、原始的な直感で会えたら一生あんたから卒業しなくてすむかもしれない
そんなこと考えてたっけ
2024/03/09 過ぎ去った日々
「物憂げな空」
「詩人」
「ちげー。か……ハハオヤが」
珍しい話題に隣で空を見上げているあいつの横顔を見る。こちらに気づかず今にも雨が降りそうな暗くて重い雲を見上げてる。
「こーゆー日、機嫌わりーから、なんでだろーと思ってしょーがっこうの時『なんでだ』って聞いたことある。そしたら先生が言ってた。雨が降りそうになると人によっては気持ちがしょげるって。それで『物憂げな空』って言ってた。たしか、たぶん」
「へー…」
ぽつんと最初に落ちた雨は頭のてっぺんに。
雨宿りを言い訳にカラオケ行けるから嫌いじゃないよって誘ったら、あいつも笑った。
2024/02/25 物憂げな空