【後悔】
沢山の「ごめん」が、世界中に転がっている。そんなの、分かりきったこと。今更一つや二つ増やしたからと言って、何かが変わるわけでも無い。
なのに僕らが後悔するのは?
プライドを守る為かもしれない。
大切な人を傷付けてしまった後ろめたさがあるのかも。
それとも約束より早く、何かを終わらせてしまったり。
はたまた遅れてしまったり。
人それぞれだけれど、「ごめん」を言える君は優しい。これだけはみんな同じだから。
明日も、一緒に歩んでいこう。ゆっくり、ゆっくり。
【風に身をまかせ】
翅を広げて、幹を強く蹴る。六本の脚を均等に伸ばし、思いっきり羽ばたく。
急上昇の圧力が身体の流線的なラインをなぞって、脳の裏がぴりぴりと痺れる。
前からの風をツノに感じながら、蜻蛉のように速く飛ぶ。
蝶を追い抜き、鳥を避け、新しいクヌギを求めて。
誰もが振り向き、この光り輝く私に魅了される。
だって私は「スター」だから。
【おうち時間でやりたいこと】
毎日想像の世界を旅しては、また新しく作り上げていく。
そう、私はファンタジー人間。
私はここに居るけれど、ここには居ない。空を舞って、海に沈んで、羽を広げて旅をしている。
そんな生活に飽きる日は、きっと来ない。
【子供のままで】
大人になってからは、もう物語なんてものは記憶の中から消え去って、数字と睨めっこする毎日。いくら休んでも疲れは取れず、どこに行っても我慢を強いられる。
今では忘れつつある少年の日の思い出。
くじらぐもが浮かぶ空。群れをなして泳ぐ魚。なかなか届かない手紙。
なんの変哲もない生活の中でふと、記憶が蘇った。
すぐに本を持って外に出て、花咲く丘で読み漁る。
日が暮れたら、太陽に向かって走って帰る。
子供のようにいつまでも。そんな願いはもう、叶わないけれど。
せめて心は子供のままで・・・・・・。
【愛を叫ぶ。】
「好きだよ! 大人になったら結婚しようね」
小四の夏、そう言った。
「好きだ! 俺と付き合ってくれ!」
中一の夏、部活終わりにそう言った。
「あぁ、俺も好きだよ」
中三の夏、電話越しにそう言った。
「好きだよ。でも、急にどうしたの?」
高三の夏、大会終わりにそう言った。
「好きさ。もちろんだとも」
社会人一年目の夏、昼休みにそう言った。
「好きだ! 俺と結婚してくれ」
社会人三年目の夏、デートの最後にそう言った。
「好きに決まってるさ。だってママは俺の運命の人なんだから」
三十五の夏、君との子供にそう言った。
「好きだってば。何回言わせるんだよ」
四十の夏、よしてくれよとそう言った。
「好きだ! だから頑張ってくれ」
五十二の夏、病気の君にそう言った。
「好きだって言ってるだろ?」
六十六の夏、酔っ払いにそう言った。
「世界で一番愛してる・・・・・・」
七十三の夏、僕は最後にそう言った。