頭のおかしい文芸部員

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5/10/2023, 11:55:29 AM

【モンシロチョウ】

 軋むベッドの上で、君は鱗粉を振り撒いている。その白くて小さい体に、僕は魅せられた。

 僕達は蜜を求めて舞っていく。そして出逢った。

 至極の快楽。

 それは花のように一瞬で、すぐに散ってしまうけれど、温もりと湿り気さえあれば何度でも咲ける。

 僕達は蝶だ。
 長い人生の、一瞬に全てを賭ける。

 艶やかな翅を伸ばて、抑えきれない口吻に鱗粉を散らし、蜜を吸って生きていく。
 昂った感情を隠しもしないで。

 今日も、明日も・・・・・・。

5/9/2023, 12:24:48 PM

【忘れられない、いつまでも。】

 シャーデンフロイデ(注:1)なんて、味わうハズが無いと思ってた。
 私は優等生で、いつだってみんなの模範となるようなことをしてきた。困っている人が居たら見返りを求めず助けたし、みんなが嫌がることも嫌な顔ひとつせず進んでやった。勿論、人の不幸を笑うことなんてしなかった。

 それが今、壊れた。

 目の前には、血だらけになって倒れたアイツがいる。私のことを馬鹿にしてきたアイツ。良い子を笑ったアイツ。中学生のくせにタバコを吸ってるアイツ。悪人のアイツ。死んでも誰も困らないアイツ。
 携帯を見ながら自転車を漕いで、車に轢かれたアイツ。
 アイツを轢いた車は、すぐにどこかへ消えていった。私は救急車も、警察も呼ばなかった。だって、もう頭無いし。アイツを轢いただけで人生が台無しになるなんて可哀想だし。
 ここは田舎だから、車の通りなんて数日に一本しか無い。だから、言わなくてもバレない。どうせこのことも有耶無耶になって、アイツを轢いた可哀想な人も助かる。
 それに、アイツが死んでも誰も困らないから。

 私もすぐに家に帰った。

 何も無かった様に自分の部屋に入って、笑った。笑いが止まらなかった。だって、悪人に罰が下ったんだもん。自業自得なんだもん。それは素晴らしく良い事で、快感だった。

 初めてのシャーデンフロイデは、私に極上の感情を与えた。



注:1シャーデンフロイデ・・・・・・ドイツ語で、「人の不幸は蜜の味」という意味。

5/8/2023, 12:12:38 PM

【一年後】

「大人にならなきゃ駄目」なんて、誰がそんなこと決めたのだろう。
 僕は、来年も再来年も子供のままでいたくって、「そんなルール破ってやろう」って決めた。
 みんなは僕のことが嫌いで、毎日のように虐めてくる。
 みんな僕のことを(精神病の)セイちゃんって呼んで、馬鹿にしてくる。僕はそんな名前じゃ無いのに・・・・・・。

「セイちゃんがしゃべったぞ! ぎゃー、セイシンビョウがうつる〜!」

 みんなそう言って、僕から離れていく。

「喋ってセイちゃん菌飛ばすなよ! オレまで嫌われちゃうだろ!?」

 親友だったあの子も。

「セイちゃんにも悪いところがあるでしょ? 全部人のせいにするのはよくありませんよ!」

 大人も助けてくれない。

「お前が不出来だから悪いんだろ!!」

 親にも怒鳴られ、殴られた。毎日毎日泣いた。
 だから、大人なんか大嫌いだ。子供も、大人も、全部嫌いだ。

 一年が経った。何も変わらなかった。
 一年が経った。やっぱり何も変わらなかった。
 また一年、一年と時間が過ぎていく。
 いつしか僕は中学生になっていて、自分が虐められていた理由や、自分の親が普通じゃないことを知った。
 一年が経った。自分の親が嫌いになった。
 一年が経った。周りを信じられなくなった。
 一年が経った。
 自分の家を飛び出した。近くの店に逃げ込んで、「親に暴力を振るわれた」と言った。今まで、世の中は悪い人ばっかりだと思っていた。そういう教育を受けてきたから。でも、みんな僕の話を聞いてくれて、施設に繋いでくれた。僕は施設で「みんな」に会えた。施設のルールで、下の名前しか分からなかったけど、みんないい人だった。

 それからもう一年経って、俺はもう立派な高校生だ。
 物書きをするのは楽しいし、学校生活も充実している。
 一年もあれば、生活はがらっと変わる。

 この一年は、何が待ってる?

5/7/2023, 11:00:14 AM

【初恋の日】

 貴方と出逢ったのは偶然だったのかもしれない。
 でもね、私が貴方のことを「素敵な人だな」って思ったのは絶対偶然なんかじゃ無いから。
 貴方は、シャキッとしたスーツが似合うのに、昼休みにはずっと隅で本を読んでいる。ちょっと変わった人。
 だから、私は言ったの。

「貴方って変な人ね」

 ちょっとからかってみたの。
 そしたら貴方は、

「そうかもしれないなぁ」

 って、無邪気に笑った。

「僕は紙魚なんだ。世界に一匹だけのね」

 また、変なことを言った。「どうして?」って聞いたら、

「だって、こんなに大きな紙魚はどこを探してもいないから」

 また笑った。口を大きく開けて、歯を見せて・・・・・・まるで子供みたいに。
 もう、私はすっかり貴方の虜。

5/6/2023, 1:14:27 PM

【明日世界がなくなるとしたら、何を願おう】

 そうだなぁ、僕は

「最後くらい平和になって欲しい」

 って願うかな?

 今まで大変なことばかりだったけど、最後ならきっと・・・・・・なんて、望み過ぎかなぁ。

 僕たち人間は「争い」に勝って、この星を支配してきた。この星に「地球」という名前をつけて、そこで生きる動物や植物にも名前をつけて、これまでを過ごした。

 けれど、本当は「名前」なんてもの無かったのかもしれない。全てが消え去っても、全部元に戻るだけ。それだけの事。
 じゃあ、最後くらい僕たちも「争い」から解放されてみても良いんじゃないかな?

 最後だけでも、さ。

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