「あじさい」
色濃く鮮やかだった思い出は
涙に打たれて色が流れて
あなたの顔さえ霞んでいく
笑顔も泣き顔もぬくもりも名前を呼ぶ声も
もう思い出せないのに
褪せた花が束になって
あなたをぼんやり思い出す
あなたなんかあじさい
今だけ
あなたを描いた水色が
目からこぼれても
涙の季節を抜けたら
色づくものか
思い出してやるもんか
『やりたいこと』
また同じ夢で目が覚める
幸せな安堵感が失望に変わる
あなたがいない事を忘れて
ただ人を信じて願いが叶うと信じていたい
それでもあなたに会いたい
あなたに
あって、何がしたいのか
はっきりとするのなら
もっと泣くことになっても
それをしたい
「失恋」
タイムリーなお題過ぎて笑えてくる
こんな歳で、恋をする予定もなくて
ただ優しいお兄さんのような
理想の旦那さんのような、
憧れみたいな気持ちでいたのに
急にキスしてくるから
少し舞い上がってしまった。
恋をしたくなったのに
急にブロックされて
地獄に落ちてしまった。
私の悩みをきいてくれた心の拠り所もなくしてしまって
私は地獄で這いつくばってる
それでも生きてやるのだ
だってあなたが辛いときは優しくしてくれたから生きながらえたもの
恨みは無しね
あなたが落とした地獄、這い上がってやる
だからもうちょっと泣かして
今は誰の胸も借りずに
車を止めて、一人で泣いてる
「正直」
胸が苦しい
会いたい
なんでなんでって
泣き叫びたい
押しかけて話がしたい
顔が見たい
理由が知りたい
抱きしめて優しくキスしてほしい
あの日の続きがしたい
また笑ってほしい
慰めてほしい
でも正直、
わかってる
何しても
あの日には戻れない
だから苦しんでもがいて
この気持ちにサヨナラしてやるんだ
だから正直、
もう会いたくないです。
さようなら
「梅雨」
優しい雨音が絶えず傘を叩く
湿度が私を湿らしていく
雨粒が曲線に沿って花の奥に入り込む
バラの蕾がほころんでゆく
甘い蜜に誘われた蟻が
雨粒に囚われている
傘を滴り落ちた大きい粒が葉を弾く
ポケットが振動する
「ごめん、今日いけなくなった」
大きなため息
少し息が白くなる
あなたのために花瓶にさすバラは
今日も生き延びた
あなたは雨の日は来ないよね?
いつも、何をしているの?
誰としているの?
私の目から
雨が降る
湿度が私を曇らせる
そんな私は嫌い
だから
次の晴れの日私から会いに行こう
梅雨を終わらせよう