『あなたのいない夜』
秋の夜に
衣擦れの音がした
薄絹一枚纏っただけの体が
小さく丸まっていた
頬を伝う涙が
細くなった腕に落ちた
白のレースのカーテンが
肩に触れた
青白い月の光が
私の背中を照らした
暗い部屋に独り
私がいた
『END ROLL』
私が泣いている意味なんて
わからないのでしょう?
優しい貴方が
私にかける言葉は
優しすぎて残酷なの
私が泣いている意味なんて
わからないのでしょう?
優しい貴方を
傷つける言葉を
言ってしまったのは私のせい
私が泣いている意味なんて
わからないのでしょう?
大好きな優しい貴方を
私の過去の言葉が
小指の赤い糸を断ってしまったの
『過ぎた日を…』
ふとおもいだされた
遠い日の記憶
貴方に出逢ったあの日から
全てが変わってしまったのね
過ぎた日を想えば幸せだったと
真夜中にため息をつく
初めて手を繋いだ日
初めてキスをした日
初めて愛を確かめた日
どれも幸せだったのに
永遠なんて有りはしないのね
黒い縁取りの小さな写真
そこで貴方は笑っていて
だけどそこにはいなくて
小さな箱のなかに
独り押し込められた
貴方だったモノは
今日 私から離れてゆく
過ぎた日を想えば
貴方との日々を乗せた雫が
床を静かに濡らして
時が止まったままの私を
小さく写していた
『踊りませんか?』
ワンツースリーで
あなたとわたし
ふたりのてをからませ
ステップふんで
愛につかれた
おろかなわたしたちを
ここちよいメヌエットにのせ
どこかへ…
ワンツースリーで
あなたとわたし
ふたりのくちびるをからめて
だきあって
愛におぼれた
わかいわたしたちの
ここちよいあのころは
もうどこかへ…
ワンツースリーで
あなたとわたし
ふたりのこころははなれて
ひとことさよならと
さいごの愛はきえて
おんがくもとまる
あたらしいしあわせをさがして
どこかへ…
ワンツースリーで
貴方と私
やっと見つけた本当の王子様
夜が明けるその時まで
私は貴方と踊りたいの…
『そっと、』
たとえばあなたが
明日を思うことができなくなったら
過去に囚われて
今を生きることで精一杯で
未来を語れなくなったら、
たとえばあなたが
冷たい影に包まれて
暖かな愛が記憶の中から
ぽっかり消えていて
独りだと感じてしまったら、
たとえばあなたが
埋まらない愛のために
自分を傷つけたなら
誰かと傷を舐め合って
自分に嘘をつくなら、
私はただあなたの傍にそっと…。
何かが変わるかは分からないけれど、
嫌われてしまうかも知れないけれど、
きっと明日もそっと、あなたの傍に。