風花

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9/30/2023, 10:31:28 AM

『そっと、』

たとえばあなたが
明日を思うことができなくなったら
過去に囚われて
今を生きることで精一杯で
未来を語れなくなったら、

たとえばあなたが
冷たい影に包まれて
暖かな愛が記憶の中から
ぽっかり消えていて
独りだと感じてしまったら、

たとえばあなたが
埋まらない愛のために
自分を傷つけたなら
誰かと傷を舐め合って
自分に嘘をつくなら、

私はただあなたの傍にそっと…。

何かが変わるかは分からないけれど、
嫌われてしまうかも知れないけれど、

きっと明日もそっと、あなたの傍に。

9/28/2023, 4:44:28 AM

『通り雨のせいにして』

冷えた手も
頬を伝う涙も
忌まわしい記憶も
突然降ってきたこの雨のせいにして

心に巣喰う闇も
孤独も
虚しさも
すべて通り雨で隠して

誰にも知られないように
濡れた身体で
「参ったな…」と言えば
きっとあなたに伝わらない

でもなにも知らないあなたが
「馬鹿ね。風邪引くわ」と
雫をタオルで拭ってくれるから
少しだけ、少しだけ、晴れてゆく







9/24/2023, 10:57:22 AM

『ほんとの形』


これだ!と思ったその形は
いとも簡単に崩れていった

誰もが知っているあの動物に
ほんとの形なんてないのかもしれない

例えば三角お耳のしなやかな毛玉
猫という生き物には形がある
そう、確かにある。

だけど小さな箱のなかに、瓶のなかに
ぴったりと液体のように溶けるのだ

さっきまであった形は
とうに無くなっていて
また別の形になっている。

形自体はあっても
「ほんとの形」なんて在りはしない
きっと、そうなんだと思う。

9/23/2023, 12:18:15 PM

『僕の城』

僕の城は
縦と横に向いただけの金属の棒
それが組合わさって
大きな城になっている

僕の城は
近所の公園の隅っこにある
足場にされがちな横棒は
塗料が剥げて錆びている

僕の城は
いつも沢山の子供達を受け入れている
どんな人にも開放された
時代に合った素敵な城なのだ

僕の城は
ジャングルジムと呼ばれている
そんな城に僕はてっぺんまで登る
僕が王様だからだ

僕の城は
子供達と、滑り台と、砂場と、ブランコと…
沢山のものがみえる
だけどその景色が
また少し、また少しと小さく見えるんだ

高いと思っていた僕の城は
年月を重ねれば低く思えてきて物足りない


だから僕はそろそろジャングルジムを降りるんだ

そしてまた誰かが王様。

8/24/2023, 1:59:35 AM

『泡』

海からポコっと産まれたよ
白くて可愛い小さな泡が
一つ産まれて、二つ産まれて
たくさん、たくさん産まれたよ

大きな泡を慕うように
小さな泡たちが周りを囲んで
ザブンザブンと揺れる波間に
静かに漂う小さな膨らみ

海の青さをちょっぴり白く染めている
可愛い可愛い泡たちは
静かにポンっと弾けて
また海へ還ってゆくんだ


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