僕を裏切ったあの子を殺して僻地に埋めたことを神様だけが知っている。暗く冷たい土の中に居るあの子をいつまでも思い続けているのは禊じゃない。ただずっと片思いをしている。最後まで僕を好きだと言ってくれなかったから、あの子の最期をもらったんだ。これでおあいこでしょ。
日差しよりもまぶしい君の夏が続いてほしい。ただそれだけだったんだ。ささやかな祈りだったけど、神様はそれを嘲ったのだ。許さない。死んでも呪い続けてやる。
赤い糸なんてほんとうにあるのかな。ぜったいに運命だと思っていた人が死んだ。ほんとうに容易く死んだ。赤い糸があるというのなら俺のことを繋いだまま、そっちに引っ張ってほしい。いまでもまだ赤い糸が繋がっているというなら、地獄にだって落ちる覚悟が俺にはあるから。
「入道雲が見える夏のうちはこの気持ちも本当だって言えるけどさ」
「なにそれ」
「いや……突然、夏が終わったら気持ちも薄れていくのかなって思って」
明日冬になったとしても君は俺のくだらない話に耳をそばだてて、笑ってくれるのかって訊けなかった。怖かったんだ、とても。
「涼しい季節がやってきて寂しい空になっても変わらないよ」
「……信じていいの?」
「強要をするつもりはないし、好きにするといいよ」
掴みどころないところが入道雲みたいだと思った。そこにあるけど、手にすることはできない。柔らかそうに見えるけど、実際どうなのかはわからない。
「信じてみるよ」
「なら、それに応えるよ」
ただただこの入道雲の見える季節ができるだけ長く続いてほしいと願っている。
盛夏を目前にして終わってしまった夏の抜け殻になにを思えばいいのか俺にはわからない。ただ君の瞳に映る夏を見つめていたかった。それも叶わないのなら秋になるまで目をつむり、空気が乾いて冷たくなるのをひっそりと待とうと思う。