「入道雲が見える夏のうちはこの気持ちも本当だって言えるけどさ」
「なにそれ」
「いや……突然、夏が終わったら気持ちも薄れていくのかなって思って」
明日冬になったとしても君は俺のくだらない話に耳をそばだてて、笑ってくれるのかって訊けなかった。怖かったんだ、とても。
「涼しい季節がやってきて寂しい空になっても変わらないよ」
「……信じていいの?」
「強要をするつもりはないし、好きにするといいよ」
掴みどころないところが入道雲みたいだと思った。そこにあるけど、手にすることはできない。柔らかそうに見えるけど、実際どうなのかはわからない。
「信じてみるよ」
「なら、それに応えるよ」
ただただこの入道雲の見える季節ができるだけ長く続いてほしいと願っている。
6/30/2024, 12:12:24 AM