見つめられると
見つめられると、どうしていいか分からなくなる。
僕はこの子から好かれているんだろうか。
…なんて、自信過剰もいいところだ。
人づてに聞いた話では、僕のことが好き…らしい。
『らしい』というのは彼女から、その言葉を直接聞いたわけじゃないからだ。
周りの勝手な憶測もあるんだろうが、それでも彼女からの視線を感じるたびに、僕の背中は少しばかり緊張する。
いっそ見つめ返せば、何か変わるのだろうか。
そんな考えがよぎったが、行動に移す勇気はない。
今日も彼女と目が合う。
彼女の瞳に僕はどう映っているのだろうか。
ないものねだり
ない物を欲しがること。
実現できないことを無理に望むこと。
そっと辞書を閉じた。
改めて意味なんか調べるんじゃなかった。
無理に望んじゃいけないことなのかしら?
あの人の心をこちらに向かせることは。
私の我儘なのだろうか。
ところにより雨
最悪だ……
と思わず呟きそうになった。
今日の目標はネガティブな言葉を口にしないだった。
喉元から出た言葉を、ゴクリと呑み込む。
なるべく平静を装うようにしてるけれど、内心は気が気じゃない。
別に恋人同士ではない、ただの幼馴染みだと言っていた。
雨なんか降るから、オレが補修を受けていたから、一緒の傘にいる2人を見てしまうはめになるんだ。
今朝のニュースを思い出す。
『…ところにより雨でしょう』
その『ところにより』に当てはまってしまったわけで。
自分の傘すら忘れて無いのだから、本当にもう
「最悪だ」
特別な存在
中学の頃から片想いしている彼。
今も一緒の職場で働いている。
今度のお休みの日に映画に誘ってみたの。
少し驚いた表情だったけど、彼は「いいよ」って言ってくれた。
お出かけする日は何を着て行こう。
新しくワンピースを買おうかな。
ネイルも可愛いのをしていこう。
ポニーテールは私の好きな髪型だから、可愛らしいポニーフックを付けていこう。
自分が可愛くなれる。
私にとって彼は『特別な存在』
二人ぼっち
時が止まったかのように思えた。
それはふいに訪れた。
待ち焦がれていた。
こちらから何度も何度も告白して、
その度に困ったような顔をするあなた。
それでもようやく叶った恋だから。
「俺も…好きだよ」
少し顔を赤くさせ、やはり困ったように浮かべたその横顔に、思わず唇を寄せた。