ねぇ、なんて読むの?
彼とは友達と行った地元のお祭りで会った。
初めは人懐っこい。けど、相手に踏み込ませない。
のらりくらりと心が、体が動く。目の奥が死んでる。
なんか、寂しそうなやつ。そう思った。
月曜日、彼に会った。
教室で。彼は転校生だった。
少し席が離れたところが彼の席。人気者。
ほっとした。理由はわからない。
次の日の放課後、彼が目の前にいた。
こないだはありがと!
ごめん、まだ名前覚えられなくて名前教えて?
嬉しそうに。でも寂しそうに言った。
何故か声がでなくて、脇にあったノートを見せた。
あっ、そっか。私の名前読みにくいんだ。
アキコだよ。
秋恋ちゃん!ぴったりだね!
今度は本当に嬉しそうに言った。
初めて彼を見た気がした。
ところで何がありがと!なの?
初めて相手の事を知りたいと思って話しかけた。
#秋恋
失くした、何もかも。
大切な人も家もお金も職も、
家族も友人も何もかも。
何も残っていない。
街に訪れるのは500年に1度と言われている大型台風。
渋谷の街頭ビジョンで知った事実は僕には無関係。
何もないから。
どれも、何よりも大事にしていた。
でも失くなった。
こんなに失くなると不思議だ。
手に入れようとか次があるとか、そんなの無い。
この気持ちをどうにかしたい。
薄い、暗い気持ち。寂しくて、怖くて、辛い。最悪だ。
でも、どうにもならない。わからないんだ。
向こうの空に光が見える。
みんなが大事にする光
僕は、目を固くつぶった。
「大事にしたい」
少し周りより背が高い私のオフィスビル。
ここはここらでは中々のオフィス街。
もうすぐ月末なのに、このフロアにはもう誰もいない。
私もこの街の夜景の一つになってるんだろうな。
前は夜景が好きだった。
夜景が綺麗なホテルとかレストランとか。
好きな人とロマンチックなところで
ロマンチックな展開になりたいなと思ってた。
結局、夢は夢のまま。
いや、幻だったんだな。
幻ならずっとみてたい。
夢なら覚めないでほしい。
何度も願った。願うだけ。
もう、二度と観れないと密かに思いながら。
夜景の光はさっきより消えた。
あと、30分位でこの輝きも消えるだろう。
突然、机の上に降ってきたコンビニの袋。
同期の声と肉まんの香り。
夢でも幻でもなんでもいい。
もう一度…。
暑い。とにかく暑い。
この暑苦しい制服のせいか、マスクか、
いや、この日差しか。
空は私の心と大違い。澄みきった空。
雨でも降ってくれたら良いのに。
土砂降りの雨。もう、滝のような雨。
雨で全てが無くなればいいの。
あの人と別れた。別れを告げられた。
大好きだった人。今も大好きな人。
あぁ、永遠なんてないのか。
永遠に続くと思ってた。
終わりなんて存在しないと信じてた。
私、一緒に泣いてくれる人もいないんだ。
ひとりぼっちなんだな。
せめて、この空だけでも一緒に泣いてくれたらいいのに。
毎日届く君からのLINE。
いつも既読をつけるだけ。
天気の話や食べたもの、綺麗な花、仕事の話。
嬉しい話、悲しい話、面白い話、何でも。
でも、私は読むだけ。
毎日届く君からのLINE。
あの時と変わらないアイコン。
写真もスタンプも君が紡ぐ文章一つ一つが
あの時と変わらない。
でも、私は読むだけ。
だって、あなたのスマホ解約したの。
LINEだって退会した。
アプリなんて残ってない。
充電だって切れてるんじゃない。
私が君をブロックしても、LINEを初期化しても、
毎日届く君からのLINE。
だから、私は読むだけ。