あの日、僕はかっこいいスーツを着てた。
隣の君も特別な服。白いドレス。
すごく綺麗。言葉に出来ないほど。
あの日、僕の命が尽きるまで君を守ることを誓った。
死んでも忘れられないあの日。
まさか、こんなことになるなんて。
君が先に死ぬなんて。
目の前の君はあの時よりやつれてる君。
身体にはいくつもの管が繋がれ、
液体が入ったパックは何回交換したかわからない。
命が燃え尽きるまで、命が燃え尽きても守ると誓った。
ずっと隣にいると誓った。叶うと思った。
いや、叶えるんだ。
あの日と同じ、君の隣で
覚めない眠り僕はにつく。
今日の日のため。
これを買ったのも。
忘れずに毎日めくったのも。
これを買った日に、この日に丸をつけて、飾り付けて。
めくる度に、破る度に。
自分の努力が報われると信じて。
頑張って、頑張った。
結局、手に入れたものは
くしゃくしゃに丸めた紙、365枚。
悔しさと後悔。
なにも残らなかった。
やっぱりいいよね。
いい曲って、色褪せないよね。
そんなことを誰かが言ってるが聞こえる。
私はあの曲が少し嫌い。
あの人が好きな曲だった。
何よりも大切だった人。
報われない努力、逃れられない運命
人も神も仏にも見放された。みんな敵だと思った。
全てが花のように散り去った。何も残らずに。
それは、一瞬で一生だった。
あの人は世界に一人。
私が他人に向けてたった一つの愛。
世界に一つだけ。たった、一つ。
桜は散るのが美しいと言う。
いつかこの桜のように、あの時見た桜のように。
私たちの物語が、散り落ち地面に落ちたものが、
誰かが美しいと手に取る日を願って。
あの時と同じ花束を持ってあの場所に向かう。
それはまるで、風に舞う花びらのように。
揺れる木の葉のように。
規則正しく。
時に自由に、不規則に。
カラフルに、モノクロに。
激しく、穏やかに、
生命の輝きと、
死の恐ろしさを忘れずに
まるで踊るように…。
さっきまでの雨が嘘みたい。
窓から見る外の景色はきらめいている。
雨露が太陽の光を反射している。
よく見ている景色なのに、初めて見るところみたい。
これ程輝く道を歩けるのだろうか。
私の頭は遠くに移動した雲みたい。
モヤモヤして、黒くて。
私をすっぽり包み込む。
だから、不安を無くすため。
これ以上心配事を増やさないように。
後悔しないように。
この先の輝く未来のために。
今出来ることをやるしかない。
目の前の珈琲は氷が溶けて薄くなっている。
少し、休憩しよう。
財布とスマホを持って、外の世界を探検に。