私の友人はとてもかっこいい。
勉強は出来ない。運動はそこそこ出来る。
顔は···。まあ、普通。
でもね、
あなたの笑顔はみんなを笑顔にする。
誰かが泪を流していれば、声をかける。
理不尽な事があれば、相手が誰であろうと怒る。
困ってる人がいれば声をかける。
捨て猫も何匹拾ってるかわからない。
泣いている子供がいれば、泣き止むまで一緒にいる。
ほら、誰よりもかっこいいでしょ?
そんなあなたの親友であることが私は誇らしいの。
真っ暗。
見えるのは満天の星。
聴こえるのは波の音。
あの人は暗いのが好きじゃないからここに来るのに文句言ってたけど、いつも一緒に来てくれたね。
私はここが好きだった。
モヤモヤした時、イライラした時、悲しい時、全部ここだった。まるで海に相談するように。
今日も足は真夜中の海へ。
あんなに好きだったのに、最後はあっさり。
泪が止まらないな。
初恋は高校生。
同じ部活で仲が良いグループの1人の君。誰よりも可愛くて可愛くて、僕の全てだった。
みんなで自転車に乗って隣町の花火大会観に行ったよね。恥ずかしくて僕は君を後ろから見つめることしかできなかった。
君は門限が早いはずなのにどうやって親を説得したのか聞いてみたら、黙って抜けてきたなんて言ったよね。
君が少しでも怒られないように、一緒に帰って謝ったよね。
めちゃくちゃ怒られたけど。
次の日に学校に来た君は満面の笑みだった。嬉しかった。
「顔色悪いよ?大丈夫??」
まさか、再びこの家に来るとは思わなかったよ。右手は鞄。左手は菓子折り。震えが止まらない。
あの時君が乗っていた自転車が門から見える。
大丈夫。君の事は僕が守るんだから、いつまでも。
震える手でインターフォンを押した。
たまに学校の別棟から変わったピアノの音が聴こえる。
放課後、1ヶ月に2回ぐらい。
幼い頃からピアノを学んでいた私は、あの変わった音符たちが不思議でならなかった。
楽しい音。
悲しい音。
怒った音。
寂しい音。
嬉しい音。
モヤモヤした音。
楽譜通りでもない、ひっちゃかめっちゃかな音符の羅列。
私には出せない音。忘れた音。
あの頃には戻れない。
その音は私からこぼれ落ちてしまったの。
いつの間にか手から消えて失くなってしまったの。
ピアノの前に座って音を出してもAIの音と変わらない。
今日も聞こえる。
あぁ、羨ましい。
生前整理。
それは自分の体が動くうちに身の回りの物を処分したり整理すること。私が今取り組んでいること。
もう、3ヶ月も前からやってるのに家は物だらけのまま。
このままでは生前散乱で死んでしまうわ。なんて、冗談でも言えない感じ。
今日はクローゼット。でも、お気に入りや思い出の洋服や鞄やらで手強い敵ね。こんなことやりたくないのが本音だけどこれが私の最後の仕事。貴方が次に進めるために。
「こんなところにいた。お昼にしよう?今日は少し寒いからね。温かいうどんだよ。」
私の手には麦わら帽子。貴方が初めて私にプレゼントしてくれた大事な宝物。少し眠ってたみたい。
「やっぱり君は似合うね。昔と変わんないね。」
「夏になったら、あのひまわりを観に行こうか。」
貴方も首を掻きながら言うところ変わらないわ。
また楽しみが1つ増えたわ。
まだあなたのそばにいたいみたい。