夜景
夜の風景ってキラキラしてる。
夜更かしに一々わくわくするほど子供ではないが、
これから先、決して飽きることは無いだろう。
ベランダで煙草を吸いながらそんなことを考える。
けれど、大人になりきれない僕には、
14ミリのタールが重くて重くていっつもむせる。
まだ短くない煙草を灰皿に押し付けながら
遠いビル群の煌々とした光をぼーっと眺める。
こうして夜景を見ていると落ち着くと共に、
なにかこう、よく分からない形容し難い感情を抱く。
僕はもういい歳をした「大人」というものだと思うけど
この気持ちの名前をまだ知らない。
だけど、僕はいつも思う。
このまま夜にいれたらな
なんだか今日はやけに煙が目にしみるなぁ。
殆ど泣きそうになりながら僕は思った。
嫌でも耳に入る明け方の新聞配達のバイクの音
重い体に反して変にはっきりとしている頭や
何故か飲めない薬と消えない目の下のくま
24個残して棚の奥に消えた30日分の睡眠導入剤
明らかに不足しているセロトニンとお金
憂鬱と共に明日を連れてくる朝日
夜明け前
半年ぶりの散歩
高架下に漂う煙と煙草の匂い
あいつから貰うセッタ
ライターはガス切れ
仕方なく口元から奪う火種
クラクラする14ミリのタール
少し肌寒い帰り道
拭えない喪失感
とほんの少しの寂寞
夏が終わる
開けないLINE
僕は弱いからいっつも逃げてばっかで
知りたくない、何も知りたくないから
君の最後の言葉からも逃げて
そうやってずっとずっと逃げて
この先も一生開くことの出来ない君のLINE
それなのにもう届かない君からのメッセージを
僕は何故か待ってる
ふと香る貴方の香り
僕では無い誰かの残り香
お願いです何も告げないでください
これ以上踏み込まないから
何も聞かないから
傍に居させてください