すれ違い
好物を大きな口を開けて食べる姿が愛おしかった。
たわいもない話をして、馬鹿みたいに笑っていた時もあった。
いつからだろ、一方通行になったのは。
気がつけば、会話も減った。最低限の会話は業務連絡くらい。
一緒にいても、空気が凍りつく感じ。なんだか居心地が悪い。
無理に楽しい会話をしてもそっけない。ふーん、そうとか、へぇーとか。
モヤモヤ、ズキズキ、イライラ。心に少しずつ、亀裂が入っていく。
何があったのか、何がダメだったのか、泣いて聞いても、怒り狂って聞いても、答えてはくれない。
――ごめん、無理。好きな人ができた。
細い糸がぷつんっと切れた。
気づいた時には、遅かったのだ。
いつの間にか、二人はすれ違っていたのだと――
秋晴れ
絵に描いたような、雲一つない青い空。
息を吸うと空気がカラッと乾いて澄んでいる。
夏の蒸し暑く、じめじめとしたものとは違う。
とても気持ちいいものだ――
忘れたくても忘れられない
何度も忘れようと思った。
両思いになって、付き合って、すれ違って別れた。
なのに、何年経っても何十年経っても忘れられない。
それだけ好きだったのかと思ってしまう。
向こうはなんとも思ってない、わかっていることなのに。
忘れよう忘れようとすればするほど、忘れられない。
たまに夢に出てきた時の朝は最悪。動揺してしまう。
忘れたくても忘れられない、まるで呪いみたいだ――
やわらかな光
春の日差しは、やわらかく暖かい光。
うとうととしてしまう、心地よさ。
なんだかいい夢でもみられそうな予感。
そう思うと笑みが溢れた――
鋭い眼差し
じーっと見てくる、その瞳。いつもその瞳に射られてしまう。
ずっと気になっていた。なぜだか、わからない。
周りは、怖いとか睨んでいるとか言っているけど……
そんなことないのに。偶然見かけた、動物と話をしている時は、とても優しい眼差しをしていた。
一人教室で本を読んでいる時は、その瞳は真剣でキラキラと輝いていた。
苦手な体育の時は、動揺する瞳。あっちこっち動く。
私だけが知っている、彼女の様々な表情ならぬ、瞳たち。
わかりやすいのにと頬杖をつきながら、彼女をちらりと見ると鋭い眼差しで見られた。
ドキッと心が揺さぶられる。一瞬で矢に射られたような。
ごくりと唾を飲んで、今日こそ、彼女に話しかけようと思った、高校二年の春――