『声が枯れるまで』
声が枯れるまで歌い続けようと思った。
世界中のファンのため、自分のため。
だけど、本当は私を捨てたアイツに届けたいの。
声が枯れるまで歌い続けようと思った。
血が繋がっていなくても本当の父親だと、家族だと思っていたから。
たけど、本当は淋しさで押し潰されそうになるの。
声が枯れるまで歌い続けようと思った。
「世界一の歌手になったら迎えにきてやるよ」とアイツが言った言葉を信じているから。
あの言葉が、私の生きる全てだから。
たけど、本当は置いていかないで欲しかったの。
声が枯れるまで歌い続けようと思った。
誰か私の歌で癒されるから、世界中のファンが救世主を求めるから。
たけど、本当はもう引き返せないところまできてしまった。
ねぇ、この二年間で世界中にたくさんのファンが出来たよ。世界中のたくさんの人に私の歌は届いたよ。
私が皆を導いたら、新時代を築いたら迎えに来てくれる?
声が枯れるまで歌い続けようと思った。
いつだって貴方に届くように歌うから。
たけど、本当は新時代なんていらないの。
ただただ……貴方の隣りで歌っていたいだけなの。
『やわらかな光』
日曜の朝、目覚めて最初に目にするのは貴方の光る影。
チープな贋作の絵画を集めて、一枚づつ白い壁に並べていったね。
ベッドの上で貴方と二人、微睡みながら眺める時間が一番好き。
レースのカーテンから差し込むやわらかな光に照らされて白く映る貴方の影はかげろうのよう。
淡く溶け込むように消えてしまわないように、爪を立ててギュッと腕にしがみついた。
『忘れたくても忘れられない』
花が咲いたような君の笑顔が、未だに僕のまぶたの奥で鮮やかに残っている。
何度忘れようと酒を煽ってみたけど、寝付きが悪くなっただけだ。
手を伸ばして触れたくても、もう届かない。もどかしくて空中に手を伸ばしても、掴むのは細かな埃だけだ。
忘れたいのに忘れられなくて……忘れたくないのに、忘れてしまうのを畏れている。
あの時「愛してる」と言って君の手を取っていれば、何かが変わっただろうか。
最後に届いたメールを何度も読み返して、何度もまぶたの奥の残像に想いを馳せる。花が咲いたような君の笑顔が未だに鮮やかに忘れさせてくれないから。
『涙の理由』
君を思い返す時、いつも最初に思い浮かぶのは泣いてる顔だった。
教室で話しかけてくれる時はいつも笑っているのに、泣いてる顔の方しか浮かばないなんて皮肉もいいところだ。
優しい君は誰かが傷つく時、いつも心を痛めてた。
誰かを思って涙を流す君を見ても優しいヒトだなと思うだけなのに、自分のために泣いてる君を見ると美しいと、愛おしいという気持ちが湧いてくる。
どうしてそう思うのか、君に触れれば分かるだろうか。
君の涙の理由に触れれば分かるだろうか。
『たそがれ』
夕闇迫るお空はたそがれ時
さぁさぁ、良い子はもうお帰り
黒い影がどんどん伸びていく
夕闇迫るお空はたそがれ時
さぁさぁ、良い子はもうお帰り
黒い子供が一人増えていく
夕闇迫るお空はたそがれ時
さぁさぁ、良い子はもうお帰り
君の友達の半分は黒に染まってる
夕闇迫るお空は誰そ彼時
さぁさぁ、帰らない悪い子はこちらにおいで
ホントとマガイが交わっていく
夕闇迫るお空は誰そ彼時
さぁさぁ、帰らない悪い子はこちらにおいで
生と死の境目がぼやけてく
夕闇迫るお空は誰そ彼時
さぁさぁ、帰らない悪い子はこちらにおいで
逢魔が時とはよく言ったもの 人と魔が入れ替わる
夕闇迫るお空は誰そ彼時
さぁさぁ、帰れない子供はこちらにおいで
入れ替わったら最後、もう元には戻れないよ