『君と見上げる月』
全部覚悟して貴方の元を去ったの。
私じゃ貴方を護れないから。足手まといにしかならないから。
だから貴方の元から離れて、私に出来る闘い方をしようって決めた。
例え今生の別れになっても、それで貴方がこれ以上傷付かなくてもいいようになるなら……。
だけど、覚悟して来た場所は怖い人達ばかりで、意図的に傷付けようとする人達ばかりで、恐怖に飲み込まれないように立ってるだけで精一杯になる。
助けてって口に出しそうで、ここから連れ出してって祈ってしまいそうで、覚悟とチグハグな本心が淋しくて苦しい。
空を見上げれば、私の覚悟をせせら笑うような細い三日月が浮かんでいた。
絶対護るって君に約束したんだ。
中途半端な力を振るって、ビビって動けない俺の代わりに嬲られるように傷付けられた姿を見て、自分がたまらなく情けなかった。
だから、次は絶対護るって君に、己の魂に誓ったんだ。
なのに黙って離れた君の覚悟も気持ちも無視して、追いかけた。未練がましく右手に残った温もりを手放せなくて。
何故と問いただすことも、どうしてと責めることも、全部後回しでいい。
今はただただ、君の陽だまりのような笑顔をもう一度見たくて、会いたくて、どうか曇らないでいて欲しいと願う。
空を見上げれば、俺の焦燥感をせせら笑うような細い三日月が浮かんでいた。
9/15/2025, 10:17:10 AM