見つめられると
横に座るあなたを
どうしようもなく大事に思った。
あなたは綺麗な目で
あたたかい声で
心地のいいテンポで言葉を紡いでいく
ある時、私たちは同じタイミングで笑った。
本当、楽しいよ。って
あなたはこちらをまっすぐに見て笑った
私は今、好意を学んでいる。
私は今、あなたを知ろうとしている。
毎秒、あなたを愛そうとしている。
バカみたい
吐き捨てた時
不信用の痛みが心臓に広がった。
2度とお前なんかと話さない
今後一切目の前に現れるな
こんなに必死になって
お互いを繋ごうとしていただなんて。
申し訳なかったよ。
もう遅いけれど、できることなら...
あなたと上手くやりたかった。
不条理
午後九時半。
見慣れた帰路の、古くさい繁華街を抜けた時、ふと言葉にならない何かを悟った。
合皮の剥がれた靴で向かうのは、ビルの影に建つアパート。
日に日に自分が消えていく恐怖。
毎朝起き上がった瞬間、心の何かが削れていくような感覚に、もう耐えられないと思った。
今日もわずかな金を握りしめて生き延びた。それだけだった。
僕は自室のドアで立ち尽くした。
錆びた鍵穴を前に、妙に生暖かいものが数滴垂れた。
頭の中で誰かの声がする。
僕の声だ。
「どうして」
「もう取り返せない」
「生い立ちを恨んで」
「捨てられないように」
「努力をしろ」
もういいや。
僕はスマホを取り出し、連絡先からあの人を探した。
そして、電話をかけた。
「あの、今夜、連れて行ってもらえますか」
怖がり
いつも通り
口をついて出る謝罪の言葉
責めないで。
先回りして顔色を伺う
しらみ潰しに落ち度を消して
「俺のせいじゃない」
逃げの姿勢を取り繕う
何も言えずに黙り込んで
ついに見つかってしまった
ついに悟られてしまった
「この程度?」
「ごめんなさい」
......!
背中に服が張り付く、嫌な感覚で目が覚めた
またあの夢だ。
今日も変わらず、怯えて生きていく。
もっと知りたい
帰り際の駅には、私たち以外誰もいない。
私は2人だけの空間が嬉しくて、高揚感を隠しながら話しかけた。
「お腹すいた、今日忙しくてお昼食べられなかったんだよね」
ね、教えて、何がすき?
そうなんだ、たこ焼きと、レモンティーか。
レモンティー、私も好き。
ちょっと甘酸っぱくて、爽やかな後味で。
最近レモンの飲み物専門のお店見つけたんだ。
今度一緒に行ってみる?
土曜日開いてるんだ!私もその日はお休みだよ。
改札前に10時とかどう?
ちょうどいい?よかった!
あ、電車来たね
じゃあ、またね。