アクリル

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2/10/2023, 2:02:02 AM

花束


泣くことに慣れたあなたへ
失うことに慣れたあなたへ
さようならに慣れたあなたへ

贈り物に乾いた気持ちを。
麻紐でまとめた
まとまりのないお祝いを。

2/7/2023, 1:11:48 PM

どこにも書けないこと


何も成し遂げられないまま
枯れて散っていく
それでいいと思っていた

それを許せなくなった
もっとまっすぐに生きたかった
やりたいことだってあった
欲しいものだってあった

隠してきた欲と  
大人ぶった仕草を

全て捨てて
思いのままに
生きていたい

2/6/2023, 1:08:40 PM

時計の針


耳障りだとも思わなくなった。

西日に照らされて
焼死体みたいになった私

生き残った時間を
音で実感する

規則正しく刻みながら
怠惰な私に語りかける。

「そのままでいいの?」

2/5/2023, 11:32:58 AM

溢れる気持ち


それぞれが昼食を求めて散っていく中、私は虚ろな目をしながら食べていたおにぎりを、危うく落としそうになった。

だって、憧れの人が急に隣で

「おつかれさまです、美味しそうですね、それ」

なんて言うから。

私は動揺を隠して、

「この混ぜご飯のもと、ハマってるんです」

なんて、ときめきも色気もないことを口走ってしまった。

「梅のやつなんですね、私も梅大好きで。いいこと知りました。今日探してみますね」

いつもの優しい声で、心底嬉しそうに笑う彼女。
その愛おしい姿に何度惚れたかわからないが、今回もしっかりと惚れた。

大好きな後輩。
歳下とは思えないほどの人柄と人徳。
思わず手を合わせたくなるほどのものを、彼女は沢山持っている。

私は今日も、梅のコーナーをうろつく。
次はどれを彼女に勧めようかなんて、起こってもいない瞬間に思いを馳せる。

それもいいだろう。

来月、私はこの職場を辞めるのだから。

2/4/2023, 10:25:00 AM

Kiss


目が合わず
声が喉で引っかかる

静かに飲み込んだ
酔いが回って

ぐらりと揺れた視界
ぎり、と抑えられる手

逃げないよ
だから
もうおいでよ。

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