アクリル

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溢れる気持ち


それぞれが昼食を求めて散っていく中、私は虚ろな目をしながら食べていたおにぎりを、危うく落としそうになった。

だって、憧れの人が急に隣で

「おつかれさまです、美味しそうですね、それ」

なんて言うから。

私は動揺を隠して、

「この混ぜご飯のもと、ハマってるんです」

なんて、ときめきも色気もないことを口走ってしまった。

「梅のやつなんですね、私も梅大好きで。いいこと知りました。今日探してみますね」

いつもの優しい声で、心底嬉しそうに笑う彼女。
その愛おしい姿に何度惚れたかわからないが、今回もしっかりと惚れた。

大好きな後輩。
歳下とは思えないほどの人柄と人徳。
思わず手を合わせたくなるほどのものを、彼女は沢山持っている。

私は今日も、梅のコーナーをうろつく。
次はどれを彼女に勧めようかなんて、起こってもいない瞬間に思いを馳せる。

それもいいだろう。

来月、私はこの職場を辞めるのだから。

2/5/2023, 11:32:58 AM