「今はカエルの姿であるが、ワシはここら一体を治めていた城の王であるぞ」
と、小さいアマガエルが喋っている。
「どうにかこの呪いを解いて本来の姿に戻りたいのじゃ。そういう事で、呪いを解く方法を調べてまいれ」
偉そうにふんぞり返ったアマガエルの呪いを誰が解こうと思うのか?適当に言っておいてもいい様な気がする。
「王様、呪いを解くにはTrueLoveをもてだそうです」
「なんじゃそのトルーラブとは?分かる様に説明せい!」
「トゥルーラブ、真実の愛、本物の愛でございます。真実の愛を相互に持つ事が呪いを解く方法にございます。」
こう言っとけば相互に真実の愛を持っていないから呪いが解けないという言い逃れができるだろう。
「ならばその、トルーラブとかいう真実の愛をここへ持ってまいれ」
……どこまでも偉そうなカエルだな。
(True Love)
カエルになった王様のオマージュ、真実の愛をもった口付けで戻るのが主流ですが原本だと壁に叩きつけられて戻るらしい。
「またのご利用をお待ちしております」
そう背中に声を受けつつ建物を出る。
心の中では『もう利用したくはねえよ』と悪態をついている。
そうは思いつつも、またいつかここを利用するんだろう。
【クローンオオカミ生成研究所】
そう看板を掲げた建物は童話世界のオオカミ達の生存を助ける組織です。
(またいつか)
童話世界のオオカミ達は全てクローンです、と言われても道徳的にはアウトな気がする。
『かぐや姫は月へと帰りましたとさ』
「さぁ寝る前の読み聞かせは終わり。ゆっくり寝なさい、おやすみ」
そう言って子供部屋の電気を消してドアを閉める。
リビングへと戻ると夫がTVを見ていた。
『人類が再び月へと足跡を残すのは何年後になるのでしょう?ロケット開発の最先端を知る展示会が…』
そうTVのスピーカーから流れている。
「月へ行ってもなんにもないけどね」
と夫がこちらへ顔を向けてそう言った。
そう、いくら月を追いかけても、星を追いかけてもそこにはもう誰も居ないのだ。
「だって、ここに居るもんね」
(星を追いかけて)
かぐや姫のオマージュ、やっぱり地球が良いって戻ってきてたかぐや姫様。
そうだなぁ、ひーふーみーよー………多分1000年くらい経ってるとは思う。
大岩の下で猿のような姿の妖怪がそう答えた。
なんでもお釈迦様の指にいたずら書きして怒られて封印されたという。
なぁ、もうここから出してくれよ。過去は過去だろ?今を生きる事をさせてくれよ。
そう懇願されるが、この大岩は動かないのだ。
無理に動かそうとするとその者は正気を失い気が狂うと言われているのもあってか無理に動かす者もいないのだ。
私には無理、俺には無理って何回聞いたと思う?数えてねえけどよ。ただこの岩どかしてくれたらお前さんの言うことなんでも聞いてやれるぜ。
(今を生きる)
孫悟空の物語、まだ三蔵法師がやってこないようです。
「早く飛べ!」
そう言われても足がすくんでしまって動かない。
「大丈夫だから、飛べ!」
腰と足を縛っているロープの留め具がカチカチと音を鳴らす。
「深呼吸して落ち着いて目の前を見て、さぁ!!」
高さから来る恐怖に足の力が抜けかけた瞬間、身体が宙を飛んだ。
いや、飛んだのではない。落ちた。
自由落下が続きやがて見えてきた地表。
ロープが伸びきり軋んだ音を立てる。
そして勢いよく遠ざかる地表。
意識がふわふわしている。
(飛べ)
バンジージャンプ死ぬまでに1度はやってみたい民、挙手。