「じゃあまたどこかで」
そう最後の声をかけて、それぞれがそれぞれに分かれ道へ進んだ。
カカシは右の道へ
ブリキのロボットは左の道へ
ライオンは真っ直ぐの道へ
私は…ちょっと待って?もう残ってないじゃない。
引き返す道もあるけど、それはなんかやだ。
ちょっとちょっとちょっと!!
(最後の声)
オズの魔法使いのオマージュ、歩いてきて交差点で別れたら誰か1人余るよね。
ちゅんちゅん飛んできた雀に餌の米を撒く。
水を入れた容器もそっと置き、縁側に座って、啄む様子をしばらく眺める。
小さな愛雀だ。
婆さんが緑茶を淹れた急須と湯呑みを持って来た。
あぁ、ゆったりした朝だ。
雀は満腹になったのか辺りを警戒しながらも飛んで行った。
(小さな愛)
舌切り雀のオマージュ、切られないバージョン。
空はこんなにも明るくて広いのに、自分はもう飛べそうもない。
王子様の像からメッキを剥がしたり、運んだりしているうちに重金属中毒になってしまった。
動こうにももう………
ん?んん?飛べる。あれ?飛べるぞ!
ああ空はこんなにも明るくて広いんだからどこまでも飛ばなきゃ!!
………………ところで、あれって自分の体だよね?
(空はこんなにも)
幸福な王子のオマージュ、もっとシリアスな最期のはずだったはずだけど。
そうだなぁ、子供の頃は早く人間になりたいって思ってたな。お爺さんと二人暮しでさ、役に立てるようにって。
まぁ、色々あって鼻が伸びたりクジラに食われたりしてたら夢が叶っちゃって人間になったのは良いんだけど、ちょっとイメージと違ったからすぐ反抗期になってお爺さんと喧嘩したり、家出したり。
あぁ、今はもうそんな事はしてないよ。
もう大人になったからね。
っと、自分ばっかり喋っちゃったね。
次は君の子供の頃の夢の話を聞かせておくれよ。
(子供の頃の夢)
ピノキオのオマージュ、人間になって成長した後の話。
「え?お前、妹の結婚式は?」
「あぁ、よくよく考えたらあまり連絡も取っていなかったし、ちゃんと理由もあるんだ。そこまで聞き分けの悪い妹じゃない」
「でもよく考えろ?1度きりだぞ?」
「結婚してもどこにも行かないでそこに住んでるんだしいつでも祝えるだろ?とにかく王様が待っておられるんだ、対応しなくては」
「……お前、王様が来てる理由分かってるのか?」
結局、メロスはどこにも行かないで王様に会ってしまうのでした。
(どこにも行かないで)
走れメロスのオマージュ、メロスこれから処刑されるんだからいつでも祝えなくなるんだぞ?