コレが最後の1本。
マッチを擦る。
暖かな火の中に賑やかな風景が見える。
あぁ、この後美味しい料理を食べた記憶の風景だなと思い出す。
マッチの軸が燃え火は次第に小さくなっていく。
待って、まだ料理でてきてない!
けれど、火は静かに消えてしまった。
終わりだ。
…
……
………
とでも言うと思ったか!?
まだまだ売れ残りマッチの新しい箱が幾つもあるんだ!!
またマッチを擦る。
1本1本の燃える感覚が短い。
思い出が、火が終わり、また初まる、繰り返す。
マッチが尽きる前にこの楽しい思い出は終わるのだろうか?
(終わり、また初まる、)
マッチ売りの少女のオマージュ、擦り放題思い出見放題バージョン。
数々の星を巡って、ようやく自分の星へ帰ってきた。
が、超高高速度軌道での航行を繰り返していたせいか、自分の時間と周囲の時間がズレてしまっていた。
自分の星へ降り立つがそこは荒廃した岩と砂の大地しか無くあれだけ賑わっていた都はその痕跡すらない。
いや、正確には、おそらく御殿があった高台は残っているが。
この星の隣にあり続けている青と緑と茶色が混ざった星は変わらない。
確か…地球と言っただろうか。
あの星も降り立ったら変わってしまっているのだろうか?行ってみよう。
(星)
かぐや姫のオマージュ、SF仕立てにしてみました。
『我を目覚めさせし者、願いを3つ叶えて進ぜよう』
中古で買ったアンティークのランプからそんなことを言いつつ変な奴が出てきた。
あまり出回らない形なので、ただの勢いで買っただけなのだが。
『どうした?ほら、願いを言ってみよ』
「うーん、願いが1つ叶うならば、ちゃんとランプとして使えるようにならん?」
『我の住処に火を点けたいと?そもそも3つ叶えると言っている。1つじゃない』
「じゃぁ、どれだけ使用してもオイルが減らず、風が吹いても雨が降っても火が消えず、変な奴が出ないランプを頂戴」
『変な…我の事か?酷くないか?』
「酷くないし、願いは言ったんだから早く」
ハッと意識が戻る。手にはさっきと変わらないランプがある。
早く帰って火を点けてみよう。
(願いが1つ叶うならば)
アラジンと魔法のランプのオマージュ、中古だし願いはランプ使わせろだしなバージョン。
嗚呼無常無情。
こんな小さな舌を切って最終的に得たのはモノノ怪どもから逃げ惑う残りわずかな生き地獄。
あんな子雀に嫉妬しなけりゃ良かった。
欲を出して雀の屋敷に行かなきゃ良かった。
夫の言うことをもう少しでも聞いときゃ良かった。
嗚呼、嗚呼、モノノ怪どもの足跡がまた迫ってくる。
囲まれて訳の分からん呻き声を聞かされる前に逃げなくては。
嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼…
(嗚呼)
舌切り雀のオマージュ、欲張り婆さんの最期。
背を低くして洞窟乗った小さい入り口を気をつけて潜る。
10m程このまま進めば同志が集まる秘密の場所へ出る。
「遅かったじゃないか。これで全員揃ったな」
「では、情報交換会を始める」
そう同志が初めの言葉を言うと、順に情報が公開され共有されていく。
自分の番はもう少し後だが公開された情報をメモに取っていく。
おっと、狙っていた3匹の豚は襲撃に成功したと情報が上がった。次の獲物にシフトしなくては。
そろそろ自分が情報を公開する番だ。
「新たに産まれた子ヤギは7頭、父ヤギは不在で日中に母ヤギが出掛ける時間があるもよう。襲うなら集団で行った方が良いだろう」
そう自分が調べた情報を話す。
この秘密の場所で交換しあった情報を元に獲物を襲いに行く。
全員が情報を公開し終えたらまた狭い通路を気をつけて潜る。そして散り散りに去っていく。
次の獲物をどうするか考えに巣に戻ろう。
(秘密の場所)
オオカミ達が獲物の情報を公開しあっているもよう、こうして色々な物語でオオカミが出るのか。