あの日点けたマッチの温もりは忘れられない。
マッチの火と共に倒れた私を助けてくれたあの人の温もりも忘れない。
あの人と食べた美味しい温かい料理の味も忘れない。
忘れた事も無い。
そう言っておばあちゃんは息を引き取った。
温もり感じる葬儀を終えて家に帰る。
おばあちゃんがいつもおかえりと迎えてくれた温もりはもう無い。
おばあちゃんが大切にしていたマッチ箱を戸棚から出して1本だけ火を点ける。
おばあちゃんの遺言通りの行動だ。
マッチに揺れる火の中におばあちゃんが見えた気がした。
(あの日の温もり)
マッチ売りの少女のオマージュ、物悲しい雰囲気。
「鏡よ鏡、世界で1番美しいのは誰?」
『それは猫です』
「…ね?質問を変えるわ。世界で1番可愛いのは誰?」
『それは猫です』
「………」
『1番美しくて可愛くてcuteで尊く気まぐれな猫です』
「………」
『1番醜いのは、自分が1番だと思っているあなたです』
「………もういいわ、この鏡は処分してちょうだい」
『あっ…』
(cute!)
白雪姫のオマージュ、ただの猫好き鏡だったようです。猫はキュートなのです。
各世界の記録をノートにメモしていく。
世界が正常かどうかを過去の記録と照らし合わせながら確認する。
おっと、ここは異常が発生しているじゃないか。
川を流れる光る竹を拾い上げ桃を流す。
こっちも異常だ。
オオカミをレンガの家から出して三男を入れる。
こっちはちゃんと海亀が砂浜にいるから問題ない。
日々の記録が今後の世界を正常化させる。
明日もまたこのノートに記録をメモしていこう。
(記録)
童話世界の記録はこうして守られているのだろう。
お弁当箱におにぎりを入れる。
おかず側は、根菜類の煮物と、ふき味噌と、生姜の佃煮を詰める。
もう一個のお弁当箱にもおにぎりを入れる。
こちらは、卵焼きと、タコさんウインナーと、ほうれん草のおひたしと、プチトマトを詰める。
これくらいのお弁当ならすぐにできるもんだと、カバンにしまって公園へ向けてさぁ冒険だと手を繋いで歩き出す。
おっと、水筒の準備を忘れていた。
(さぁ冒険だ)
童謡「これくらいのお弁当箱に」のオマージュ、外で食べる弁当に特別感あった子供の頃。
広い草原に一輪だけ咲く花。
その中に私は居る。
親指程度の背丈しか無いからこそ出来る芸当である。
少し顔を出し、まだ少し冷たい風を受ける。
「暇だなぁ、でも居心地良いここからは出たくないなぁ」
そう言ってまた花の中に潜り込む。
不思議な力でもあるのかこの花が枯れる事も無く、お腹が空く事も病気になる事も無い身体でかれこれ十数年程引きこもり生活を満喫しているのであった。
(一輪の花)
おやゆび姫のオマージュ、花の中で寝てみたいってのは夢だなぁ。