あぁそうさ、この家に居た老婆はもう腹の中さ。その事をまだ知らない君が来るのを布団に隠れて待っているのさ。
今日はこの家を襲うか。しかしこの家はレンガ造りか。吹き飛ばせないのならいつもの様に煙突から入り込んでやるさ。
この家には老婆が1人で住んでたはずで、赤い頭巾を被った子供がよく訪れて居るのは確認済みだ。ならばやる事は1つ赤い頭巾を被って子供の声でドアをノックするだけだ。
まだ何も知らない狼3匹、一斉に顔を見合わせてどんちゃん騒ぎ。しばらくしたらまた静寂が訪れるのでした。
(まだ知らない君)
赤ずきんちゃん、3匹のこぶた、7匹の子ヤギより狼3匹の鉢合わせ。この3匹がどうなったかはまだ知らない。
急に風が強く吹いた。
急いで近くの木の下に入る。
風を遮るように風下に立つ。
しばらく吹いた風が止んだことを確認しまた歩き出す。
次はいきなり日が照りだし暑くなった。
適当な日陰を探し急いでその下に入る。
服を脱いで汗を拭く。
暑さは収まらない。
近くに居た人だろうか?急いで自分の居る日陰に走り込んできた。
息もきれぎれに慌てた様子である。
日陰に居ても暑さは襲って来る。逃げ場は無いようだが、日向より幾分かはマシなのだろう。
焦げ臭い臭いがしだした頃、また風が強く吹き出した。
(日陰)
北風と太陽のオマージュ、どちらもやり過ぎたバージョン
最近ぐっと冷え込みが強くなり、被せてもらった笠ではもう寒さを堪えることが難しくなってきた。
吹き付ける風はより強く、元から硬い体をさらに硬くさせる。
手拭いから笠に替えてもらった末っ子が震える声で
「先日ね、たまにここに来る子狐君が手袋買いに行ったんだって。僕達も温かいの買いに行こうよ」
と提案しました。
「買いに行くって言っても、昼間は動けないじゃないか」
「子狐君も夜に買いに行ったって言ってたよ」
それなら、と翌日の夜に買いに行こうと決まりました。
そして翌日の夜、買い物から帰ってきたその頭には耳当て付きの温かいニット帽子。
帽子かぶって少し温かくなった地蔵達は今日も並んで居るのでした。
(帽子かぶって)
笠地蔵のオマージュ、末っ子だけ先端にぼんぼん付きのニット帽を買ってたらいいなぁ
急いで大人を呼んで来なきゃ!
誰か1人でいい、誰でもいいから近くに居てくれ!
そう願いながら僕は走った。
だけど昼間のこの時間、大人は仕事に出ていてなかなか誰にも会わない。
急がなきゃ急がなきゃ。
走り疲れて息を整えていると釣竿を持った人が向こうから歩いてくるのが見えた。
急いで駆け寄る。
釣人は少し驚いた様子だったが小さな勇気を振り絞って伝える。
「向こうの砂浜でいじめっ子達が亀を!!」
そこまで言ったところで釣人は察したようだ。
「教えてくれてありがとう。助けに行こう」
釣人は砂浜に走っていった。
僕はその場で座り込んで震える手を落ち着かせるように深呼吸した。
(小さな勇気)
浦島太郎のオマージュ、亀イジメてた事を伝えに走った子の勇気。
今日は色々忙しい日だった。
朝から晩まで町に物を売りに行っていたのだが、なかなか商品は売れず、もう1つ向こうの町まで足を延ばして売り歩いて来た。
更にその道中に罠に掛かったツルを助け、浜に打ち上げられた海亀を助け、川を流れていた桃を拾い上げ、光る竹を切り、御札を持って逃げているという子坊主を助け、売れ残った笠を地蔵に被せ、蟹と争っているという猿を捕まえ、泥舟に乗せられたという狸を助け、ようやく家に辿り着きこれから夕ご飯を作らなければならない。
本当に色々忙しい1日だった。
夕ご飯が出来ようかという時、玄関戸が激しく鳴らされた。何事か?と戸を開ける。
思わず「わぁ!」と声が出てしまった。
色々な来訪者が外に並んでいる。
助けたお礼や、品を各々に置いてその団体は帰って行った。
姿が見えなくなるまでその場でただただ立ちすくみ、「わぁ…」と情けない声しか出なかった。
(わぁ!)
色んな物語の導入伏線回収しすぎた者の物語。