ぽんこっぅ

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11/12/2024, 12:07:16 PM

勢いよく坂道を転がる。
穴を避け、段差を飛んで、グングンスピードを上げていく。
他のヤツらもどんどん追いかけて転がってくる。
スリルを求めて始まったこのレースだが、そういえば誰もゴールを決めていない。
穴に落ちて脱落したヤツや、コースから逸れたのかいつの間にか姿が見えないヤツが増えて数が少なくなってきた。
このまま最後のひとりになればこのレースの勝者になれる。

そんな考えに気を取られ、段差を見逃して弾かれてしまった。
勢いに乗ったまま空を飛ぶ。ふわりと浮いた感覚のスリルがたまらない。
うまくコースに戻ろうとしたが宙に浮いていてはどうしようもなく、そのままコースの横のお池にポチャン。
コースアウトだ。
水面でぷかぷか浮いて息を整える。
横にドジョウが顔を出し心配そうに見守っている。
レースには勝てなかったがこれ以上無いスリルは味わえたから良しとしよう。
(スリル)

童謡・どんぐりころころのオマージュ、お池に落ちた理由

11/11/2024, 12:06:52 PM

いくら羽ばたけど飛ぶことは出来ない。
上手く泳ぐ事も出来ない。
みんなと毛色も違う。
ワタシはみんなと同じじゃないから海を渡る旅にも行けないんだ。
ここで捨てられるんだ。
周りでは一緒に育ったアヒル達がワイワイと飛ぶ練習をしている。
次の満月の日の次の日に渡りを始めるそうだ。

端っこで丸まっていると育ててくれた母アヒルがやってきた。
悪いけど、渡りには連れて行けないわ。アナタは多分…ここに居た方がいいのよ。
そう言われて、泣いてしまった。
アナタの本当の種類は、ダチョウなのよ。翼はあるけど飛べないの。走る事に特化したから泳げないのよ。
えっとなって顔を上げる。
自分でも気付いてはいたけど、やっぱりダチョウだったんだ。現実逃避してアヒルのフリをしていたけど間違えてなかったんだ。

飛べないアヒルの子、もとい、ダチョウの子は渡りに飛ぶみんなを地上から飛べない翼をバサバサ振って見送るのでした。
(飛べない翼)

みにくいアヒルの子のオマージュ、白鳥でもなくダチョウでした。

11/10/2024, 11:29:48 AM

ススキの穂を幾つも束ねてフクロウの飾りを作る。
屋敷の周りに幾つか飾り付けて満足そうに頷いて、部屋に戻ってきた。
机の上にはまだ幾つもフクロウが置いてある。
さっき飾り付けに持っていった分しか作ってない筈だが?と思っていると奥の部屋からススキを持って奴が出てきた。
全く、こんなに作ってどうするつもりだ?とそいつに問う。
ご近所さんと、教会と、賛美歌隊の子供達と、向こうの孤児院に持って行くのだ。
とそいつは答えた。
いつの間にか出来上がっているフクロウを大量にカゴに入れ、美容に悪いと日焼け防止のハットとマントを着けるとそいつは意気揚々と出かけて行った。

全く、あの吸血鬼(?)は、近所付き合いが良過ぎて人気過ぎて困ったものだ。
(ススキ)

ススキのフクロウ、作ったことありますか?

11/9/2024, 12:06:39 PM

あの箱を見るといつも脳裏をよぎるあの時間。
あれから50年経ったが、約束を守り箱はそのままだ。
向こうではままだ半日しか時間が経っていないのだろう。
もう年齢的にも寿命は近い気がする。もう一度あそこへ行っても長く楽しめないだろう。
いっその事箱を開けて楽になってしまうのもありかもしれない。
そんな考えも脳裏を幾度も浮かんだ。
今はもう、朝から日が暮れるまで砂浜の陰で海を眺めるだけしか出来ない。
時々波の間に亀が頭を出すが、すぐに見えなくなる。
箱を開けてないか、約束を破ってないか確認に来ているのだろう。
もしかしたら、箱を開けることを待っているのかもしれないと脳裏に浮かんだが、頭を振り考えを追い出す。
もうすぐ日が暮れる。明日も来るから今日は家に帰ろう。

凪の海にはもう誰も居なかった。
(脳裏)

浦島太郎のオマージュ、玉手箱の約束を守り続けた太郎。

11/8/2024, 1:18:08 PM

今横であくびをしながら賛美歌を聴いているコイツを殺す事は出来ない、意味がないことだと悟った。

教会の講堂に居る事、賛美歌を聴いている事、聖書が愛読書だという事、十字架の首飾りを掛けている事、快晴の公園で昼寝をしていた事、昨日の夕飯がニンニクマシマシのラーメンだった事、割と菜食派だという事。

全てが吸血鬼のソレに当てはまらない。
仕掛けた事が全く効かない。意味がない。

賛美歌を聴き終えて教会から出る。
道向かいの屋敷にそのまま向かい中に入る。
もう23時じゃないか、美容の為にもう寝るよ。
そう言って棺桶を改造したベッドに潜り込んで行った。
全く、この吸血鬼には、吸血鬼のソレが意味がないことなのだった。
(意味がないこと)

世の中こんな吸血鬼(?)が居てもいいよねって話。あ、この吸血鬼、寝る前に歯磨きしてない。

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