ぽんこっぅ

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11/8/2024, 1:18:08 PM

今横であくびをしながら賛美歌を聴いているコイツを殺す事は出来ない、意味がないことだと悟った。

教会の講堂に居る事、賛美歌を聴いている事、聖書が愛読書だという事、十字架の首飾りを掛けている事、快晴の公園で昼寝をしていた事、昨日の夕飯がニンニクマシマシのラーメンだった事、割と菜食派だという事。

全てが吸血鬼のソレに当てはまらない。
仕掛けた事が全く効かない。意味がない。

賛美歌を聴き終えて教会から出る。
道向かいの屋敷にそのまま向かい中に入る。
もう23時じゃないか、美容の為にもう寝るよ。
そう言って棺桶を改造したベッドに潜り込んで行った。
全く、この吸血鬼には、吸血鬼のソレが意味がないことなのだった。
(意味がないこと)

世の中こんな吸血鬼(?)が居てもいいよねって話。あ、この吸血鬼、寝る前に歯磨きしてない。

11/7/2024, 12:44:54 PM

おじいさんの優しさだって事は分かってるのよ!せめてもの、できる限りの事だったのは知ってるのよ!でもね、あなたの笠とわたしの手拭いじゃ性能差がありすぎるのよ!おじいさん、笠が入ってた籠の方がまだ被り物としては優秀だって言いたいけど、あの場面じゃ言えないじゃない。
あなたとわたしの被り物交換しなさいよ!!

ドタバタと雪の中で暴れる手拭い被った地蔵をなだめ、あれやこれやと荷を引いて吹雪の中おじいさんの家を目指す笠地蔵達なのでした。
(あなたとわたし)

笠地蔵のオマージュ、笠の個数が足りなかったのはしょうがないよね。

11/6/2024, 12:58:58 PM

舞踏会の賑やかな雰囲気とは裏腹に、裏方のキッチンシェフやソムリエやメイド達は大忙しだ。
シェフはいくつものフライパンや鍋を行ったり来たり。
ソムリエは、ワイン貯蔵庫と会場の往復で持久走のように止まらない。
メイド達はクッキー、マシュマロ、イチゴジャムをカートにたっぷり乗せてパーティー会場のケータリングコーナーに運び入れる。
カップケーキ、ババロア、プリン。次のカートも急いで運ぶ。
あまりに多く積み上げた使い終えた食器類は洗われもせず、次の料理が載って運ばれて行く。
行ったり来たり走り回ればあちらこちらで衝突事故も起きるもので、ゼリーに赤ワインに焼きたてのハンバーグが空を舞って、柔らかい雨のように降り注いだ。
だがみんな止まらない。後で片付ければいいんだと、次の品を手に持って任された仕事へ散っていく。
(柔らかい雨)

童話によくある舞踏会の裏方達の物語。

11/5/2024, 1:25:04 PM

ここは、洞窟か?いや、それにしては生暖かい。
ほとんど何も見えない暗闇に1人きりだ。
時々、脈拍に似た音がこだましているがどこから聞こえているのか分からない。
壁を探して手を伸ばし、少しだけ前へ進む。
それはすぐに何かにぶつかった。感触で探る。手すりか、柵のようなものだ。
思い出した。ここは舟の上だ。という事は、光を灯せる道具があったはずだ。
舟の後ろの方に手すりを伝い移動する。道具を入れた箱の感触を探り、ランタンを探し出す。
どうか点いてくれ。
ランタンの開口部から一筋の光が延びた。
良かった、壊れてない。
辺りを照らす。
赤黒い壁が照らされた。
そうか、舟ごと飲み込まれて…
事態を把握すると共に、どうしようもない恐怖に座り込んだ。
落としたランタンの一筋の光は、赤黒い壁のその先の暗闇まで延び、先の見えない空間に消えていった。
(一筋の光)

ピノキオのオマージュ、おじいさん目線

11/4/2024, 11:54:06 AM

彼女は哀愁を誘う顔をして佇んで居た。
今まで虐められてきた相手3人が処刑される寸前で居るのだからいろいろ思う事があるのだろう。
処刑台の上で今更許しを乞う3人の顔には焦りや後悔が浮かんでいる。

ちょっと待って。

彼女が声を上げた。
処刑人達が動きを止める。

こんなんじゃ私の気持ちも今までの報いも収まらないわ。処刑して楽になるなんて駄目よ。

さっきまでの哀愁を誘う顔から、別の哀愁漂う顔に変わっていた。

処刑は中止して。地下牢に戻しておいて。

そう言って、ガラスの靴音を響かせながら馬車へ戻っていく。
その背中からは哀愁とは全く異なる雰囲気が漂っていた。
(哀愁を誘う)

シンデレラのオマージュ、原作を参考に

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