生きてきた証
初めての場所、初めての人々
様々な仕事
偶然、出会った人と語り合う時
お互いにどの様に生きてこられたのかわからないまま、今を語る。
何気ない会話の中にその人の生き様が見えてくる。
丁寧に細かく繊細に話されるのだな
大雑把で親切な人間力がありそうな人…
言わなくても、あの人もこの人も、自分でさえも色んなことを経験して苦労して乗り越えて来たんだと、当たり前な事にびっくりしたり…
どんな仕事をしてきたのか?と思う
仕事によって人間は作られると思うから。
でも聞きたいけど聞かれたくない。
面白かったことや苦労話を聞かせたいけど言いたくない。
教えて欲しいけど聞きたくない。
矛盾している自分。
ある時ある人に生まれから学生時代から生きてきたあらゆる事を聞いて貰った。話したくて聞いて欲しくて
あの人はもういない。
誰かに「私」を知ってほしい、そう思ったの…
生きてきた証を残したくて
なぜだろう…
こんなちっぽけな人間のつまらない話、話して残してどうなるの…
そんな事より子供達を産み育て送り出した事、それが私が生きてきた証
この世に生まれた意味
私は3人の子供をほぼワンオペで必死に生きていた。
私自身今で言うネグレクト状態で育ち、大人になり子供が嫌いだった。
何故か3人の親になり人並みな生活を目標に頑張っていた。
長男は頭が良く優しい子だった。
それなのに時に辛く当たる、怒鳴る、叩く、理不尽に投げ出す時もあった。
私自身苦しかった。未だにひきづり申し訳なさから長男とはお互い、不自然な感じがある。
長男はもう自分なりの心の折り合いをつけているようだ。
最近次男が自分の子供に手をあげているらしい。
本人の気持ち、葛藤、ストレス、悩み等どのように寄り添えばいいのかわからない。
とても優しい次男なのに…。
信じて、待とう。きっと乗り越えてくれる。
砂時計の音
出逢いは運命…
貴方とのシーンはシャッターを切るように切り取られそのまま私の心に積み重なっている。
始めから最後まで…
たぶん目と目が合ったあの瞬間から砂時計は動き出したことに、私達は気づきもしなかった。
いつか終わりが来ることは考えないようにしていたけれど…
どこかで感じていたのかもしれない。
砂が少なくなってから終わるまでは早く感じるもの。
限りある中で燃え尽きたから、後悔はない。
今はただ遠くで砂の音だけがサーサーと聞こえているだけ。
梨
あれはかなり昔の事
私が東京の端っこの二階のアパートに同棲していた頃の話
部屋にはなんにもなくって…少しずつ必要な物を揃えていたっけ
貧乏だったけど楽しかったと今は思える。
ある日田舎から段ボールが送られてきた。
少し甘い香り…
すぐに空けると洋梨がびっしり…
私の大好きな洋梨。
熟しているらしく芳醇な香り、所々茶色くなって柔くなっていた。
中からひとつ掴みそのまま大きな口でがぶり…
果汁が滴り落ちて、久しぶりの味は私を田舎の梨畑に瞬間移動してくれた。
何年帰ってないんだろ…
出てくる時、2度と戻らないつもりで東京に来たのだった。
結局、私には合わなかったようだ。
あれ程嫌いだった田舎に戻り根を張っている。
子供達に梨を剥いて食べさせてあげよう。
私の母のように…。
静寂の中心で
秋の夜、中秋の満月が雲に隠れてこちらをうかがっている。
星は見えない
時々秋の虫が鳴いている。
遠くでバイクが走り行く音が響き消えていく。
空気はしんと冷えて日中の暑さが嘘のよう。
深呼吸してみたが何かが胸に詰まっているようだ。
頭の方から雑音が聞こえる。
耳の奥か…
そうか、血潮の流れの音なのか…
ざーざーしゅーしゅー、…、…、
ざーざー
時々途切れて無音になる。
この静寂の中心で鼓動が止まる。
そして又動き出す。
体とは裏腹にざわつきが止まない心よ
何かが不安で怖くてざわつくのだ。