美しい
空を見上げるのが好きな私は、今迄数え切れない程の素晴らしい空の景色を見てきた。
その時々の自分に重ねて、言葉にならない気持ちを時に慰め、時に奮いたたせ、夜明け…朝焼け…眩しい太陽…真っ青な空…
この年になると何気ない浮雲にも沢山の想いが溢れる。
突然のあの人の訃報に慟哭したあの日、ぼーと空を見ていた。
気がつくと夕焼けが私を包んでいた。
次第に震えるほど、空が真っ赤に変わり雲がメラメラと燃えていた。
辺り一面赤い世界、今迄に見たことのない燃えるような赤々とした空。
極楽の入り口からほんの少し私を覗いているかのように、貴方のまなざしが私を包んでとても美しい世界を届けてくれた事がその時はっきりと感じたのです。
もう二度と出会うことの無い、愛あふれる空でした。
ありがとう…ありがとう…
沢山の愛をありがとう…。
君と歩いた道
空を見あげるともう少しで満月になる月が真っ直ぐこちらを見ていた。
アカシアの香りが夜の静けさの中充満している。
月明かりはあの頃と同じ様にふんわりとそれでも、しっかりと道を照らしている。
何年も過ぎたのにあの道は今も同じ様に月明かりに照らされて、静かにずーと待っている。
あなたの大きな手にしっかり握られ、ただひたすらついて行った夜。
後戻りは出来ず、未来もない私達。
何処へも行けず、月夜の道を彷徨い
思い出したように突然思いっきり抱き締めてくれた。
貴方と歩いた道は今、アカシアの香りが漂い、ひとりぼっちの私を誘っている。
貴方の香りが私を狂わす…。
未練を残して逝ってしまった貴方
追いかけることも出来ない薄情な私。
今夜も1人君と歩いた道を往く。
さらさら
好きな景色に川が有る。
浅いけど透明で時々鮭も遡上する川
自分の人生を重ねてしまう
自分の川はもっと深くて暗い川
澱んでいて色々な物が流されている
時が流れ…よくよく見れば、私の川はとても浅かった。
さらさらと優しく流れ、光を受けてキラキラ輝き遥か遠い何処かへ流れている。
あのドロドロは何処へ?
あの暗闇の様な底なし沼は何処?
雑多な物共は何処?
真実は何?
昔から今この時でさえ、暗い川底に溺れそうなのに…
本当は何も見えていなかった。
本当は何も分かっていなかった。
ガキガキの石が流れ流され、次第に丸くなっていくように、トゲトゲした私の心も丸くなっていくのだろうか…
流れ着いた先では、浅かった小川の事など夢の様に思えるのだろうか。
大海原に流れたら、今度はどんな荒波が待ち受けているのだろうか?
行けるところまで…やれるだけやってみて…大丈夫❢
瞳を閉じても何も言わなくても、サラサラ、サラサラ流されましょう。
大丈夫、大丈夫、大丈夫…
手放す勇気
今あなたは怒りのメガネをかけています。だから何も言ってはいけません。他人に何か言ったならそれは決して言ってはならない言葉になる。
私自身考えても妄想してもいけません。考えてはいけない、妄想してはいけない事ばかりを行う羽目になる。
怒りを手放す事は欲を手放す事です。自分は欲の塊です。
本には沢山の教えが書いてあります。
日々修行と戒めた側から大声で怒り狂う自分が居ます。
手放すべきなのは自分自身です。
どうしたら自分自身を手放すことができるのでしょうか?
あれが欲しい、あれが食べたい、あゝして欲しい、あんなこと言って欲しい…。
生きる事は欲との戦いなのでしょうか?
その欲が無くなったら私自身生きていることになるのでしょうか?
わからないまま今日も怒りに抗う私です。
せめて怒りの色眼鏡を外す勇気を持ちたい。
記憶の海
初めての記憶はおかゆの味。少しだけ塩っぱいトロトロのおかゆ。
今のような離乳食なんて無いから…ただそれしか食べ物が無いという事だったんだろうな。
嬉しかった事は私の体の中で新しい命が息づいた事。初めての経験ただ涙が溢れた。
悲しみと苦しみの思い出しか無いと思ったらふっと嬉しかったことを思い出した。人は何故悲しい事ばかり思い出すのか?
中途半端に死を覚悟したのに、眩しい朝は馬鹿な私をさらけ出す。
少しづつ開き直っていく図太さで、
記憶の海を漂う。
微笑む顔に後悔はなさそうだ。
最後の記憶は海だと思った羊水の中で安心しきった命の始まり。