子供が5歳の時だった。
旅先でぐっすり眠っている彼を置いてちょっとお店に出掛けた。
帰ったら旅館の人の側で泣いていた。ひと言、言ってくれないと…とお叱りを受けた。
子供達が2〜3年生の頃だった。
ぐっすり眠っている彼らを置いてカラオケに行った。当選し自転車を頂き、ランランと帰ってきたら、お隣さんが介抱してくれていた。2人で泣いて探していたらしい。
置いていかれてどれだけ寂しく怖かっただろう。最低でひどい親だった。
自分自身、母親が嫌いであまり感情すらなくなって…なのに死んだら謝りながら号泣していたっけ…。
私に会えば彼は、きつい言葉を投げかけ、スマホから目をそらさず嫌いなんだろうなと思っていた。当たり前だけど…
同じ気持ちと思う事は、傲慢なのかもしれない。でもきっと私が死んだら彼が悲しむ事は想像できる。思い上がりかもしれないけど、彼は優しい人間なのだ。せめてこれ以上、悲しませたくない。
皆が泣いても彼は泣かずに何処か1人で泣くだろう。
棺に花を1輪入れたことで、彼の心の傷を連れ、炎と共に昇華されます様に…。
桜
桜の花を見ると嬉しくなりますか?
哀しくなりますか?
ほとんどは嬉しくなるのでしょうか…。
あの香りが大好きです…私。
でも最近あまり香りがしない様な気がします。
青空の中の満開の桜も好きですが、
ライトアップの中で月に見守られている夜桜も大好きです。
古老の大桜の根元の隙間、小さな芽の小さな桜も好きです。
神々しさ、妖艶さ、清純さ、穏やかさ、優しさ、華やかさ、言葉に表すことが陳腐に感じられるほど、桜には言い表せない表情があります。
日本に生まれて良かったと思う春です。
空に向かって
空に向かって鳴いているのは巣から落ちたひな鳥でしょうか?
親鳥が無ずすべもなく高い空を飛び回ります。
空に向かって鳴いているのはペンギンでしょうか?
凍死してしまった我が子に…知らずに餌を求めて海に旅する母親に知らせているのです。
空に向かって泣いているのは子供でしょうか?
泣いても叫んでも冷たい母親は空に帰ってしまいました。
空に向かって咲いているのは向日葵です。枯れても種が沢山落ちて、次の夏には大輪の花が咲き誇ります。
永遠の中で命は巡ります。
喜びも絶望も長い時の中で昇華するのです。青い空、奇跡の星は今この時を命の限り生きています。
春風とともに
春風とともに新しい時代の幕開けだ
やめて逃げ出したかった学校、この街、知り合い、家族…
ボロボロでもなんとかなった卒業
別れられる、さようなら
学校、友達、親、家、街…。
長い時間揺られて越えてやって来た知らない街、人、生活、仕事、学校
木々や草花、街並み、空気…
1人で生きていくんだ、此処から始まるんだ、春風に背中を押されて。
あれから幾歳月…もう春になっても緊張することはなく、穏やかに空を見上げ懐かしむ。
春風に吹かれ見渡すのは生れ育った街並み。結局帰って来たのだった。
微笑むだけ…今の心には何も浮かばない、春なのに冷たい風が通り過ぎていく。
人生ってちょっと寄り道、我を忘れて酔っ払い、雨に降られて、ひと休み、長い夢をみていたかのようなもの。
涙
握り締めた拳、めり込む爪、滲む血、誰にも気づかれない涙
悲しい出来事、一晩泣き続けてぐっしょり重い座布団…
涙達は川になり大河になり空に帰った。1人小舟に揺られ何処に流れていくのか…
何故か不思議と寒くはない。
桃色の空が広がり、温かい風に包まれている。
頑張ったね、辛抱したね…もう大丈夫だよ…と私を待っていてくれた…
ずーと見ていてくれたのね