瞳をとじて
悲しくなると瞳を閉じる。何も見たくない、全てをフリーズさせる。
嫌な事を思いだすと瞳をとじて、考える。ちゃんと考察して反省するべきか、忘れてしまうべきか…。
あまりないけど、嬉しかった事を思い出したとき、自分が気づかなかった思い、さり気ない言葉の裏側、何も考えないでただ喜んでいた浅はかな自分に悲観して瞳をとじる。
とじた瞳の中に貴方を探す。
怒らないで優しく諭して…。
静かに話を聞いて笑って…。
若いままのあなたがそこにいる。
瞳をとじると私とあなたの2人きりの世界がそこにある。
あなたへの贈り物
あれから私は仕事を辞め家に引きこもりました。
もう傷つくのも傷つけるのも嫌だから。
でもやりたいな〜って事は沢山やってきた。昔からの憧れのピアノ始めたり、自分の思い通りの器も作ったし…。旅行だって遠くまで行った。
もう思い残すこと無いくらい。
ただ人間関係は無に等しい。
もちろん近所付き合いは愛想よく真面目に。昔馴染みとはそれなりに。
家族とはギリギリなんとか。
つまんない?ちっぽけ?吹けば飛ぶ?
それが私。本当の私の現実。
だから何も贈ること出来ない。
何も残っていない空っぽな私。
そんな空っぽな飾り1つ無い裸の私を贈ります。もらってくれますか?
それでも愛していると言ってくれますか?
羅針盤
性格から言うと方向を教えてもらったとしてもその方向に行くとは思えない。いつも土壇場で思いつきでその場の気分で動く私。
更に目的地があるからこその羅針盤なのではないか?何処へ向かうか決めていない場合、どう活用すれば良いのだろう。
もし目的地を決め、迷う事なく一途にこの道を行くとした時に、羅針盤が教えてくれるのは何か?
迷いながら苦しみながら様々な経験が、身体に心に染み込むからこその答えがそこにあるとしたら?
羅針盤が示すのは間違いのない方向?苦労するけどその先に明るい未来が示す方向?楽に幸せになる方向?
スパロウの様に宝物を示してくれたとして、私の宝物ってなんだろう。
健康、美味しいご飯、子供達の笑顔
な〜んだ毎日自分の周りにあった〜
手のひらの宇宙
人は地球に生まれ知恵を得た。
地球から旅立つ事が可能になった。
計算により見知らぬ星を見つけることが出来た。
人は神になれた気がした。
自分は死なないと勘違いするようになった。溢れるほどの富を得て全て思いのままになれる気がした。
ある日自然が全てを奪う。
抗いようの無い力を見せつけられる。傲慢な人間は神に祈る。何ともならないと知ると神を呪う。
この星の出来事が宇宙の中ではとてもちっぽけな事に誰も気づかない。
そしてそれすら誰かの手のひらの中で生まれ消えていくものだとしたら…手のひらの宇宙に私達が存在していたとは…
風のいたずら
夏の暑い日、坂道を走っていた。
そこにあの人が居た。
もう会わなくなってしばらく経つ。
でも街を歩くと自然と探していた。
似た人がいると立ち止まりドキドキを感じながら振り向き、ずっとそこに立ちすくむのだった。
自然を装いすれ違い様、風のいたずらに困ったように髪をかき上げながら振り向いた。偶然振り返った様に。
驚く貴方にびっくりした様にさりげなく微笑む。
夏の風はさりげなくサワサワと私の熱さを飛ばしてくれた。
ずっと会いたかったと心で呟き見つめる私に貴方は何も言わず熱い手を伸ばしできた。
2人の間に風が流れていた。