光と闇の間で
私は浮いていた。宇宙の真ん中にいると感じた。遠くに小さな光を感じた。でも周りは漆黒の闇。はっと気がつくと腰から下が無かった。闇に溶けている。痛みはない。私は光を目指し泳ぐようにもがいた。
ここに誰も無い。私は生まれて初めて感じた。絶対の孤独。恐ろしい…
言葉にできない心の痛み。
気がつくと眩しい部屋、誰も居ないベッドに1人、私は眠っていた。
まだ体が動かない。
少しづつ足が…動いた、少しだけ。
ある、足があった。
戻ったのだ、光と闇の間から。
失った者、あの闇の中で今も漂っているだろう。
神様から授かった、産まれることの出来なかった私の命。名前さえ無い。私の命の半分は、あなたと一緒、光と闇の間で永遠に漂うから。
距離
体はこんなにも近くにいるのになぜ、とても距離を感じてしまうの?
私はいつだって孤島の住人。
出来るだけ心を砕いてきたよ。
話を聞くときは目を見て一生懸命考えて、寄り添った精一杯の言葉を選んで探して話したの。
なるべく笑顔でね。笑い声は豪快に、みんなが笑顔になれるお話を心がけた。見かけより真面目な方なのに、面白いって言われたり。
わかってしまうものなのかな。本当は誰一人信じていないことを。本心はなくて、ありのままの私です、みたいな振りがバレバレだった?
昔、言われたことがあったっけ。
『いつか人を信じられたらいいね』と。彼女には私の本当の姿が見えていたのね。
他人の心なんて誰にも分からない。
もしかしたら全ての人が、私と同じなのかも。いや、それはないんじゃない?似たような人もいるかもしれないけど、信じ合える仲間と生きている人のほうが多いのではないかな…。そもそも何を信じ何が信じられないの?
何処まで相手の事を知っているの?
話した事全て信じているの?
なぜ偽りを言う必要がある?
自分が思う程人は、悪い人ばかりじゃないし、善人ばかりでもない。
相対する人は多分鏡。
自分が信じれば相手も信じてくれる。逆も然り。
距離を感じる時、そう感じさせているのは自分自身なのではないだろうか?
好きな男に抱かれながら違う男の夢を見る。
きっと男は距離を感じていたはず。だからこそ、よけいに強く抱きしめたのね。あの時も…。
泣かないで
泣かないで恋心よ…願いが叶うなら涙の河を越えて全てを忘れたい
いつかこんな歌詞の歌を聴いた。
泣いていた。
貴方を失ってもう二度と人を愛することも愛されることも無いとわかったから。
恋をする、あのときめきや切なさ。一途に見つめ、息が苦しくなるほどあなたを想った。
失うという事、もう二度と会えないということ。
自分の中のもう1人のふるえたままの自分に、慰めていた。
泣かないで…もう…泣かないで…と
泣く。それは甘えだろうか?
男が泣くんじゃない…大人のくせに泣くなんて…仕事で泣くなんて恥ずかしい…とか。
泣いてはいけないか?
平和と言われて当たり前の様に生きている。でも少し前同じ国で平和に憧れて命をかけてギリギリの中でかろうじて生きていた時代があった。
泣きたくても泣けなかっただろうと思われて、今、こんなことで泣くなんて恥ずかしい。でも平和な今こんな小さな事が自分の全てなのだ。
食べる事より家族の事より生活する事よりも、あなたを失って全てを失ったかの様に思えて途方に暮れている。泣かないで歩くしかないのだ。
泣きながらでも進むしか。
いつか、いつの日か晴れる日が必ず来る。時薬。だから…泣かないで。
冬のはじまり
春…私は何も怖いものはなかった
寂しかったけど、私を縛る何ものもなく自由だった。
夏…無我夢中で走ってた。
生まれて初めてのドキドキ、眩しすぎて熱かった太陽に身体中火傷して傷だらけになった。
秋…傷を癒やすすべも分からない、孤独は唯一の相棒。
せめて私に魅せて…。
鮮やかな赤、幸せの黄色、優しい緑
艶やかな自然の無情さ。冷たい風に刹那の彩りは儚くて。
冬…まだ始まっていないのに秋は冬と連れ立って来る。漆黒の闇に星は煌めいて、オリオンが顔を出す。
燻されたような香りが冬のはじまりを知らせてくれる。
もうすぐ厳しい冬が来る。もう思い残すことは無い。生きたいように生きやりたい放題、振り返れば反省と後悔が怒涛のごとく溢れてくる。
寂しいけれど幸せだった。2度と春に巡り合わなくても、それでも良いの。まだ冬のはじまり、私の冬は未だ始まったばかり。今年の冬は長くなりそうです。
終わらせないで
別れを言い出したのは私から。
この見えない鎖から解き放たれて自由になりたかった。
初めての男ではなかったのに、全て忘れられない。
あなたは寂しそうに笑った。
季節の替わり目に来るメール。
誕生日にお祝いのメール。
私は、嬉しいくせに全て無視した。
また、あの苦しい日々に戻る勇気はなかった。
何故愛することがこんなにも苦しいのだろう。
飲んでも飲んでも癒されない喉の渇き。求めても望んでも叶わない想い。本物の愛情ではないから?
私達は別々の道を歩き出した。
時々夢をみた。そんな時必ず側にあなたを感じた。わかっている。遠い何処かであなたも私を求めていることを。貴方が求めれば私は夢を見る。私が望めば心で思っただけなのに数カ月ぶりにメールが来る。元気か?と。
見えない何かでつながっている事、わかっている。あなたも私も。
終わりが近づきつつある私の人生。
忘れてしまった。
貴方の名前も顔も。なのに私を呼ぶ声が聞こえる。
…そうか?…と黙って話を聞きながら私を抱きしめる優しいひびき。
それすら忘れそうになる。
もう終わった遠い恋の思い出なのに
どこかで私を支えてくれていた。
いつも無意識に探している。似た人を追いかけている。
あともう少しだけ生きていようと思う。全て忘れたら私そのものが終わる。私からさよならしたくせに。
あなたを傷つけたのに。
許して…、そしてまだ終わらせないで…この恋情を。