りゃん

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4/7/2023, 10:21:11 AM

君と海に来ていた。
少し肌寒く感じるが上着を貸すのも違う気がした。
「あのさ・・・。」
「もうすぐ日が沈むね。」
「そっそうだね。」
「波の音も日中聞くにはリラックスするのに夜になると怖くも聞こえるなんて不思議ね。」
「うん。」
「凄く悲しいときは景色がいつもより鮮明で多分この夕焼けは忘れられなさそう。」
「ごめんな・・」
「仕方ないよ。海外事業部で転勤決まったなんて応援しないわけにはいかないよ。」
やけに波音がうるさい。彼女の声が消え入るようだ。
本当はついてきてほしいとも思ったが彼女は家族を置いていける環境ではない。
なんて言って良いか分からず夕日は闇まであとわずかになった。
「最後にキスして良いか?」
「うん」
彼女の顔を見ながら数々の思い出が浮かび上がる。
感謝を伝えたいけど言葉に出来ずそっと唇に触れて
今までありがとうと思った。

「行こうか。」と海岸を歩き始めた。
もう暗闇が後ろから追いかけて来たがコンビニの明かりを目指して車まで戻った…


『沈む夕日』

4/6/2023, 5:14:48 PM

君の目をみつめると恥ずかしそうにうつむく。
君の目をみつめると期待まじりで上目遣いする。
君の目をみつめると瞳の中緊張している僕が映る。
君の目をみつめると惚けた表情が堪らない。
君の目をみつめると聖母のような優しい微笑み。
君の目をみつめるととろんとした淫靡な視線。
君の目をみつめると恍惚として全てを受け入れる。
君の目をみつめると苦悶のような視点が定まらない
君の目をみつめると離れまいと必死にしがみつく。
君の目をみつめると全てを曝け出した痴
君の目をみつめると微睡みの中愛しいものを癒す


『君の目をみつめると』

4/5/2023, 10:36:06 AM

暁は飛行機の中から日本を見ていた。
今回の一時帰国は次のフライトの家族への報告もあった。
こんな夜まで煌々と明るい国はない。
久しぶりの日本にホッとしている自分がいた。東京生まれの暁は明るい夜に慣れていたので滅多に見られない星が好きだった。
満天の星空は神秘的で暁にとって非日常なので余計に入れ込んだ。
宇宙飛行士に成りたいと思った子どもの時の夢を叶える時がとうとうやって来たのだった。
家族の報告を終え再びNASAに戻り、いよいよ今日がスペースシャトルの打ち上げ日となった。
地球を飛び立つ惑星を見に行ける。あんなに星に焦がれていた自分がどのような景色になるのかとワクワクが止まらなかった。

『星空の下で』

4/4/2023, 4:21:15 PM

「ねぇ今日何が食べたい?」
「ん?」
「ビーフシチュー?」
「うん、」
「麻婆豆腐?」
「うん、」
「肉じゃが?」
「うん、」
「カレー?」
「それでいい。」

もう何百回も繰り返した会話。
なんでそれが良いって言えないのかな?
最初から今日はカレーが食べたいなって言えないのかな?
宇宙から隕石が落下したら
今日は俺がカレー作るよって言えるのかな?
我が家で1番手の掛かる大きな赤ちゃん。
貴方残して私が先に死んだらどうするのかしら?
そしたらやっと自分で立ち上がれるのかな?
私は準備を始めなければ夫の自立を促すために
私がいなくなった後も生活出来るようにそれが愛ってもんよね。

『それでいい』

4/3/2023, 11:31:30 AM

「ななみ、おやつにマドレーヌ食べようか。」
ななみは4歳、お母さんの手作りおやつが大好きだ。
「もう1個食べても良い?」
「いいよ。」
今日は幼稚園でたくさん遊んでお腹がすいていた。
お母さんに甘えられるのもあと少しお母さんは赤ちゃんを産むために入院が決まっていた。
そっとお腹に耳を当てて赤ちゃんの声きこえるか試してみた。ななみはそっとお母さんのお腹に
「赤ちゃん産まれてきたら私はお姉さんになるのよ。おやつは1つだけにするわ。」
と声をかけた。
お母さんは
「フフフ」
って笑っていた。




『1つだけ』

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