りゃん

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君と海に来ていた。
少し肌寒く感じるが上着を貸すのも違う気がした。
「あのさ・・・。」
「もうすぐ日が沈むね。」
「そっそうだね。」
「波の音も日中聞くにはリラックスするのに夜になると怖くも聞こえるなんて不思議ね。」
「うん。」
「凄く悲しいときは景色がいつもより鮮明で多分この夕焼けは忘れられなさそう。」
「ごめんな・・」
「仕方ないよ。海外事業部で転勤決まったなんて応援しないわけにはいかないよ。」
やけに波音がうるさい。彼女の声が消え入るようだ。
本当はついてきてほしいとも思ったが彼女は家族を置いていける環境ではない。
なんて言って良いか分からず夕日は闇まであとわずかになった。
「最後にキスして良いか?」
「うん」
彼女の顔を見ながら数々の思い出が浮かび上がる。
感謝を伝えたいけど言葉に出来ずそっと唇に触れて
今までありがとうと思った。

「行こうか。」と海岸を歩き始めた。
もう暗闇が後ろから追いかけて来たがコンビニの明かりを目指して車まで戻った…


『沈む夕日』

4/7/2023, 10:21:11 AM