「はい、これ」
「……これって、」
「勿忘草。花言葉はね…」
さっき道端でガサゴソやってたのはこれが理
由か。幼子か?こいつは。いや、今に始まった
ことじゃ…ってそれどころじゃない。
実はこの草花を渡されるのはこれが初めてじ
ゃない。前にも一度渡され、数日しないうちに
ふらっと居なくなった。エグい気分屋のこいつ
は数十年一緒にいる俺のことでも簡単に着拒に
した。
「花言葉はね、『私を忘れないで』」
「…今度はどこ行くんだ。」
呆れ半分、怒り半分のような声が出た。
「別に。どこにも」
「………」
「ただ、なんとなく」
* 勿忘草 No.14
この世界に光があるのなら。
もし、仮にそうであるなら私は間違いなく光
のある場所にはいない。辺りが明るいのだから
気づくわけがない、とかそういう話ではなく
て。
光のある方向など、見たくもない。まやかし
で子供騙しな希望など、必要ない。
それになにより、才能をたんまり持つ生き物
が、逆光に照らされて私を見下ろしているだろ
うから。
* #逆光 No.13
こんな夢を見た。
過去に決裂し、もう連絡の取れない、今まで
にないほど絆を深めた仲間であり親友。
其奴に嫌というほど罵倒される夢。
実際は、引け目を感じて俺が一方的に離れて
しまった。彼奴は「すまない」と謝る理由もな
く謝って俺の前から消えた。
罵倒されたのが、現実であれば良かったの
に。
現実であったら…
* #こんな夢を見た No.12
何故か、ここに呼ばれているような気がした
今となってはもう何もない軍港。数年前まで
はもう少し賑やかだったはずだ。軍人がいて、
軍船があった。
此処より数里離れた海の底でかつてのバディ
は眠る。自分の首から下がる、相棒の認識票が
ざわめく。
* #海の底 No.11
運命かと思った。
今日のお題がまさに私の胸の内だった。
1年とそこら、不意に思い出して戻ってきてみ
た。もっと読みたいって反応をくれていた人の
多さに驚く。
頬を水滴が伝う。胸が暖かい。
遅くなってごめん、そしてありがとう。
「ただいま」
* #君に会いたくて No.10