あぁ、君。
こんなところで何をやってるんだい?
「……何って……?え?ここ、どこ?」
知らずに来たのか。
「……そうみたい?」
そう、キョロキョロと見るな。
そんなにここが物珍しいのか。
「あ、あの、ここ……これって、夢?」
夢だと思うのかい?
「だ、だってここ真っ黒だもの。なんか普通じゃないし。それにいきなり、君って呼びかけられたもの。夢じゃないの?」
ほう?
意識はしっかりしているようだな。
「どういう意味」
褒めてるのさ。
「褒めてるって……て、いうかあなた誰?」
さぁ、誰だろう?
「まぁ、夢だから誰でも良いけど、でも私はあなたのこと知らないから」
夢というのだから、これは君にとっての夢なのだろうな。
「だから!これは夢でしょう……っ!!」
——もう、そろそろ目覚める頃か。
「だからぁ、」
なぁ、君。
現実は夢じゃないし、夢も現実じゃない。
だが目覚めればどちらでもない。
君が目覚めた時どう感じるのか君自身に問いかけるんだな。
「あなた……ホントに誰なの?」
僕か?
僕の名前は、
「……ッ!」
突っ伏した両腕から、ガバッと顔を上げた。
外に面した窓から微風が吹いてカーテンを揺らしていく。
夢見心地でぼう〜っとする。
両腕に何やらを敷いている感触に目を下げた。
読みかけのお気に入りのマンガだ。
ちょっとだけくしゃくしゃになっている。
あっ、そうか。
マンガを読んでて、いつの間にかうたた寝をしてたみたい。
なんか変な夢を見た。
そこは真っ黒な空間で、知らない人が出てきて私はその人と喋っている夢。
夢なのに変な感じ。まぁ、夢だから別にいいや。
それより、くしゃくしゃになったマンガを眺めて、これ、もう元に戻らないな〜なんて思ったら悲しくなる。
とっても好きなマンガなんだ。
内容は、黒衣の美形探偵がいろいろと怪異にまつわる事件を解決する怪奇マンガだ。
「あれ?」
ふとマンガを見た。
黒い背景のコマ割りと会話、何回も読んだ。
なんだろう?
なんだか、
見慣れてるのに……これ、なんだか、さっき見た夢の内容に似ているような。
『僕か?
——僕の名前は、夢幻、夢幻魔実也というのですよ』
『こんな夢を見た』
*夢幻紳士というマンガをネタにしました。
「お手をどうぞ?お姫様」
いたずらっぽくそう言って、恭しく手を差し伸べると貴方はニコリと微笑む。
今晩、社交界デビューの私はちょっと躊躇いながらその手に手を重ねた。
そして重厚な扉の前でその時が来るのを待つ。
中では、貴族たちのざわめきとオーケストラの楽曲が漏れ聞こえてくる。
「どうした?緊張してるの」
私は口にするより先に頷いた。
ここに来るまで、この日のために礼儀やマナーを叩き込んだ。ドレスもアクセサリーも新調した。
でも。
想像以上にとても華々しくてきらびやかで、気後れしてしまう。
私と同じデビューする令嬢たちと比べてしまう。
「ふ、誰でも社交界デビューは緊張するものさ」
まっすぐ前を向いたままそう言った。
「とはいっても、この扉の向こうへ行けばそうも言ってられなくなる。そう、頭が真っ白になってね?」
貴方が私を見てウィンクを寄越す。
あまりの言葉に私は苦笑する。
「何それ?」
そんなごまかし方ってある?
「ミストラル伯爵、及びソラリス伯爵令嬢、ご入場!」
扉の両端で待機していた兵2人が扉を開く。
「さぁ、頭が真っ白なまま行こうか」
眩い光を放つ扉の向こう側へ優雅に貴方が私の手を引く。
あぁ、なんだか、もうどうでも良くなってきた。
こうなったら頭が真っ白でもいいわ。
「えぇ。」
私は微笑む。
特別な夜はこれからなのだ。
お題 特別な夜
ゆらゆら揺れるよ
波間に揺られて
時々、手探りで泳いで
くるくると同じところで迷って
いつの間にか海の底に沈んで
苦しくなったら浮かぶんだ
ゆらゆら風に吹かれて
遠いところまで運ばれて
気づいたらまた海の底
苦しくなったら、また浮かぶんだ
海の底
君に会いたくて
君に会いに行くよ
スマホだけじゃなくて
電話だけじゃなくて
手紙だけじゃなくて
君に会いたくて
君に会いに行くよ
自転車に乗って
車に乗って
電車に乗って
時代は変わっても
その行動力は変わらないよ
君に会いたいから
君に会いに行くよ
THE BOOMの星のラブレターを思い出したので。
お題 木枯らし
紅く染まる木々を
揺らす木枯らし
陽の光は、柔らかく
影が、薄く凍る
もうすぐ
冬がやってくる