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「お手をどうぞ?お姫様」

いたずらっぽくそう言って、恭しく手を差し伸べると貴方はニコリと微笑む。
今晩、社交界デビューの私はちょっと躊躇いながらその手に手を重ねた。

そして重厚な扉の前でその時が来るのを待つ。
中では、貴族たちのざわめきとオーケストラの楽曲が漏れ聞こえてくる。

「どうした?緊張してるの」

私は口にするより先に頷いた。
ここに来るまで、この日のために礼儀やマナーを叩き込んだ。ドレスもアクセサリーも新調した。

でも。

想像以上にとても華々しくてきらびやかで、気後れしてしまう。
私と同じデビューする令嬢たちと比べてしまう。

「ふ、誰でも社交界デビューは緊張するものさ」

まっすぐ前を向いたままそう言った。

「とはいっても、この扉の向こうへ行けばそうも言ってられなくなる。そう、頭が真っ白になってね?」

貴方が私を見てウィンクを寄越す。
あまりの言葉に私は苦笑する。

「何それ?」

そんなごまかし方ってある?

「ミストラル伯爵、及びソラリス伯爵令嬢、ご入場!」

扉の両端で待機していた兵2人が扉を開く。

「さぁ、頭が真っ白なまま行こうか」

眩い光を放つ扉の向こう側へ優雅に貴方が私の手を引く。

あぁ、なんだか、もうどうでも良くなってきた。
こうなったら頭が真っ白でもいいわ。

「えぇ。」

私は微笑む。

特別な夜はこれからなのだ。


お題 特別な夜


1/21/2026, 10:27:27 PM