「お手をどうぞ?お姫様」
いたずらっぽくそう言って、恭しく手を差し伸べると貴方はニコリと微笑む。
今晩、社交界デビューの私はちょっと躊躇いながらその手に手を重ねた。
そして重厚な扉の前でその時が来るのを待つ。
中では、貴族たちのざわめきとオーケストラの楽曲が漏れ聞こえてくる。
「どうした?緊張してるの」
私は口にするより先に頷いた。
ここに来るまで、この日のために礼儀やマナーを叩き込んだ。ドレスもアクセサリーも新調した。
でも。
想像以上にとても華々しくてきらびやかで、気後れしてしまう。
私と同じデビューする令嬢たちと比べてしまう。
「ふ、誰でも社交界デビューは緊張するものさ」
まっすぐ前を向いたままそう言った。
「とはいっても、この扉の向こうへ行けばそうも言ってられなくなる。そう、頭が真っ白になってね?」
貴方が私を見てウィンクを寄越す。
あまりの言葉に私は苦笑する。
「何それ?」
そんなごまかし方ってある?
「ミストラル伯爵、及びソラリス伯爵令嬢、ご入場!」
扉の両端で待機していた兵2人が扉を開く。
「さぁ、頭が真っ白なまま行こうか」
眩い光を放つ扉の向こう側へ優雅に貴方が私の手を引く。
あぁ、なんだか、もうどうでも良くなってきた。
こうなったら頭が真っ白でもいいわ。
「えぇ。」
私は微笑む。
特別な夜はこれからなのだ。
お題 特別な夜
ゆらゆら揺れるよ
波間に揺られて
時々、手探りで泳いで
くるくると同じところで迷って
いつの間にか海の底に沈んで
苦しくなったら浮かぶんだ
ゆらゆら風に吹かれて
遠いところまで運ばれて
気づいたらまた海の底
苦しくなったら、また浮かぶんだ
海の底
君に会いたくて
君に会いに行くよ
スマホだけじゃなくて
電話だけじゃなくて
手紙だけじゃなくて
君に会いたくて
君に会いに行くよ
自転車に乗って
車に乗って
電車に乗って
時代は変わっても
その行動力は変わらないよ
君に会いたいから
君に会いに行くよ
THE BOOMの星のラブレターを思い出したので。
お題 木枯らし
紅く染まる木々を
揺らす木枯らし
陽の光は、柔らかく
影が、薄く凍る
もうすぐ
冬がやってくる
君はとても美しい
キラキラと輝いて見えて
まぶしくて
君が見ているこの世界も
とても美しい
世界はとても鮮やかで
華やいでいる
きっと恋をしているからだね
#この世界は
#美しい