「鋭い眼差し」
昔から、大嫌いな奴がいる。
テストの点数で落ち込んでいる時、体育のマット運動の授業で倒立に失敗した時、果てには消しゴムを落としただけでからかってくるあいつ。
たまに私のことを、鋭い眼差しで見てくる。
他の人にはしない。私にだけだ。
どうしてこんなにも執着するのか、わからない。
せっかくの華金の帰り道なのに、こんなこと考えてるなんて、気分が悪い。
そんなことを思っているうちに、通学路にある分かれ道に差し掛かった。
登校のときは急いでいるのであまり気にしないが、下校のときは好奇心に揺さぶられていつもと違う道を行きたくなってしまう。
…今日は、好奇心が勝ってしまったみたいだ。
いつもとは違う道。結局同じ道に着くことはわかっていても、どこを通っているかはわからない道。
好奇心を抑えられず、どんどん体は進んでいく。
ちょうど曲がり道の前を通り過ぎようとした時、そこにはあいつがいた。
いつも私を見る時とは違う、このうえなく優しい目で小学1年生くらいの子の頭を撫でている、あいつが。
私はあいつがそこにいることにびっくりして、逃げるように帰った。
次の日の朝、学校であいつに呼び出された。心底嫌だったが、あいつがいつもより不安げな顔をしていて断ることもできなかった。
「なぁ、お前、昨日の帰り、俺のこと見てた…?」
『……?別に見てたわけじゃない。たまたま通りかかったときに見えただけ。』
「、でも、見たんだよな…?」
『まぁ、』
「っ、はぁぁぁぁぁぁぁ…」
「さいあく…」
『は?なに、私に見られたのがそんなに嫌だったわけ?いつも散々私のこと見て、からかってきたくせに?』
「いや、だって、」
「好きな奴にあんなとこ見られるとか、恥ずいじゃん」ボソッ
『、?なんて??』
「なんでもねぇよ、!!」
あいつは顔を赤らめた。
初めてみる顔だった。
すごく新鮮で、なぜか目が離せない。
心臓が、きゅんと鳴った気がした。
end
「束の間の休息」
今日は久々に有給をとった。
まぁ…とったというよりとらされた、だけど。私は趣味のためにお金を集めていて、毎日の残業もその一貫。でも流石に酷かったのか、上長に「頼むから休んでくれ」と言われた。
久々の休み、どうしようか。しばらく休むことなんてなかったから、何をしたらいいのかわからない。
とりあえず趣味のもの集めでもしようか。困ったときは趣味だ、趣味。ちなみにさっきから連呼しているその趣味というのはメイク。コスメを集めるためにお金を貯めている。
そうと決まればさっそくショッピング!
レッツゴーである。
さあやってきましたショッピングセンター!の中の化粧品売り場。やぁ心が踊りますなぁ。可愛い入れ物に入ったファンデや微妙に色がちがうリップがたくさん並んで…ハッッ!!!
こ、これはまさか、人気のインフルエンサーさんがあれだけ探し求めていた激レア期間限定メイクセット!??まさかこんなところにあるだなんて…。
即買い決定。
と、来て早々にテンションが上がって買ってしまったがこれ、だいぶお高い。死ぬほど残業した甲斐もあってまだまだ財産はあるけれど、今日の財布の中身はほぼ空である。
1つしか買っていないのにもう強制帰宅だ。さいあく。
束の間の休息、可もなく不可もなくって感じでした。
end