静寂に包まれた部屋はどうしてか、息苦しかった
「もういい!話しかけないで!」
そう言って私は自身の部屋に駆け込んだ。
ついさっきまで、私は母親と口喧嘩をしていた。
きっかけはほんの些細なこと。
仲良く話していても、ほんの少しの価値観の異なりですれ違い、すぐに口喧嘩。
それでも、この様子は私たち家族にとっては日常茶飯事の出来事だ。
お陰でいつも家庭内の空気はどこかギスギスしている。
そもそもお母さんが悪いんだ。別に私の考えを真っ向から否定しなくても、「確かにそういう考え方もあるよね」って受け入れてくれれば、口喧嘩になることはなかった。私はそういう風に否定されると機嫌が悪くなってしまうってことは、身内であるお母さんが一番分かっていることじゃないか。
それに私はもう高校生。反抗期くらい、なってもおかしくないのに、あんなに躍起になって私の態度を直そうとしててさ。余計な御世話だよ。
なんて思っている私が、嫌いになる。
自分の態度を棚に上げて相手を卑下して、自分の悪いところを認めずに正当化させようとしてる。
そんな私を責め立てるように、シーンとした静寂に耳鳴りがした。
「なにがしたいんだろ、私」
ポロッと、涙が一筋こぼれた。
静寂な部屋は、あり得ないほどに息苦しかった。
~~~終わりに~~~
「OK」の誤タップで、
数回か、おかしな文が投稿されてしまいました。
申し訳ありません。
別れ際に君が送ってくれた言葉
僕には大切な親友がいます。
とても大切な人です。
血が繋がっているわけでも、恋人という関係でもありません。
ただ、一緒にいてとても心地が良く、ずっと親友でいたいと思えるような人です。
その親友はとても活発で、小さい頃からヤンチャして、先生に怒られてました。
大人になった今も変わらず元気で、たまに仕事場の上司に怒られることがあるそうです。
反対に僕は大人しく、何にも構わず突っ走って行動してしまう親友の、ストッパーのような立場でした。
けれども、僕は親友の元気ハツラツな行動を見れることが毎日の楽しみのようなものでした。
そんな楽しみを止めることをするのは、少し、悲しかったです。
その親友は、一度も病気になったことがない、と満点の笑顔で、自慢するように言っていました。
にわかには信じがたい話でしたが、確かに親友には病気という病気にかかっていたような日は一度もなかったような、と認めざるを得ませんでした。
反対に僕は病気がちで、小さい頃なんて毎日のように咳や熱に苦しめられ、外で遊ぶことのできる親友が少し羨ましく感じていました。
けれども親友が、外で遊べない僕を可哀想に思ったのか、僕の雑談話に付き合ってくれました。
そんな優しい心を持った親友に、僕は憧れを抱いたんです。
僕と親友の性格は、ハッキリ言って正反対でした。
こんなにも正反対な人っているのか、と感心した程です。
けれども、正反対だからこそ、お互いの足りないところを補い合えて、そんなお互いを認められるようになったのだと思います。
ずっとそんな関係が続くと思ってたんです。
現実は、そう甘くありません。
親友は、人生で初めて、病気にかかりました。
今まで一度も病気にならなかったからなのか、親友は自身の病気の看病の仕方も分からず、病気がとても悪化させてしまうことになり、最終的に入院することになってしまいました。
慣れない環境にいるせいか、慣れない体の状況でいるせいか、親友はどんどん痩せ細っていきました。
それでも僕は、親友にできる限りのことをし尽くしました。
親友に病気の看病の仕方を教えたり、雑談をしたり、容体が悪化してしまったときにはすぐにナースコールを押し、大丈夫だよ、と体を擦ってあげたり……。
どれもこれも、幼い頃、親友が病気がちだった僕にやってくれたことでした。
まるであの時から、立場が逆転したような、そんな雰囲気でした。
親友の体は段々と回復していきました。
それでもまだまだ体は弱まっている状況です。
看病はお医者さんや看護師さんがやってくれるとしても、僕にできることは親友の体が完全に回復するまでやりたいです。
そんなとき、仕事で遠い場所に長い期間、出張しないといけなくなりました。
僕は最初、勿論拒否しました。
親友の看病を、できる限りして親友が元気になるまでずっと見ているんだ、と。
親友のことを信用していない、とか、そんなことで親友は死なない、と言われても構いません。
ただ、僕には親友の背中は小さく見えて、いつか消えてしまいそうに思えたんです。
だから、その仕事を拒否しようとしたんです。
しかし、そこで親友が
「自分は大丈夫。構わずに仕事に行ってきて。」
と言ったんです。
心優しい親友のことでしょう、恐らく僕が仕事を拒否したあとの会社での信頼や、他の会社員に出張の仕事が来てしまう、という心配から言ったのでしょう。
僕はその言葉を受け、渋々ながらも、仕事を受け入れました。
出張する当日、親友はメールでこう送ってくれました。
「君が帰った頃に、絶対に元気になって待ってるよ。」
僕はその文を見て、
「よし、仕事頑張ろう。」
と、つぶやきました。
そして出張から帰る日に一通の留守番電話が来ていました。
内容は、親友が亡くなった、と。
~~終わりに~~
親友がどんな性別で、
どんな年齢で、
どんな容姿で、
どんな病気になって、
どんな死因だったのかは、
全て、あなた次第です。