11.
神様だけが知っている本当の彼女。
優しく、笑顔で他人に接し、頼まれたことはなんでもやる。
勉強もスポーツもできる。成績もいい。
いわば、天才と言うやつだろうか。
みんなが羨むほど完璧でとても美しい表の顔。
裏では、闇に隠れ人を殺す殺人鬼。
彼女の正義は間違っているのだろうか。
悪い人を、法で裁かれない極悪人を殺す殺人鬼。
美しい笑顔の裏には、闇の中で現す穢れた顔を持っている。
でも、それさえも美しいと思ってしまう。
彼女の裏の顔は神様だけが知っている。
10.
会いたい。会いたい。会いたい。
何度叫んでももう届くことは無い。
好き。大好き。愛してる。
もう二度と聞くこともなくなった。
幸せだったのは束の間。
遠い昔の話だ。
9.
生まれて初めて同級生を好きになった。
今までは、何となくで同級生や年上の人と付き合ってきた。
でも、高校生になって初めて、隣の席のあの人を好きになった。
最初はぎこちないない挨拶から始まった。
それからどんどん話すようになった。
あの人は、絵も下手だし、頭も悪いし、話す時もぎこちない。
でも、好きなところも沢山ある。
話す時必ず目線が合うようにしゃがんでくれるところ。
授業が分からない時、こっそり答えを教えてくれるところ。
手を振ると少し照れくさそうに笑顔で振り返してくれるところ。
目が合うと必ず笑うあの仕草。
数え切れないほど好きになる要素が沢山詰まっている。
今まで、付き合った人には、酷いことばかりされてきた。
だから、好きだという想いを認めたくなかった。
でも、あの人はなぜだか大丈夫な気がする。
あの人の一つ一つが愛おしく思えてしまう。
一緒に幸せになりいと思ってしまう。
私は、生まれて初めて同級生を好きになった。
8.
梅雨は嫌いではない。
雨の匂いは好きだ。
湿っぽい気温も、嫌いではない。
でも、梅雨は、私の彼を殺した。
あの日、雨さえ降らなければ。
天気予報は晴れだった。
あの日、雨のせいで防犯カメラが壊れなければ。
事件の証拠は消えず、犯人も捕まっていたかもしれない。
あの日、雨で車が渋滞しなければ。
私の彼は、助かっていたかもしれない。
梅雨は嫌いではない。
でも、あの日を境に憎いほど大っ嫌いになった。
7.
「お母さんおはよう。」
「・・・・」
「お母さん?」
「・・・・」
昨日の朝は普通に話してたのに。
喧嘩をした訳でも、怒られた訳でもないのに、母は私の言葉には答えず黙っている。
不思議だなと思いながらも食パンをかじりテレビを見る。
『昨夜未明、帰宅途中の女子高校生を刃物で数十箇所刺すという事件が起こりました。少女は昨夜、運ばれた病院先で、死亡が確認されました。警察は殺人事件として捜査しており、犯人は現在も逃走中で・・・』
「物騒だね。」
何度声をかけても母から返事はない。
「私もう時間だし、学校行ってくるね。」
登校中、仲のいい友達も私を無視して通り過ぎる。
声をかけてもこっちを見向きもしない。
不思議な思いで教室に入り席に座った。
「はーい。出席とるぞー。」
「○○、✕✕・・・・・」
(次は私の番だ。)
すると、みんなが一斉に泣き出した。
「○○、帰ってきてよ。」
「なんであいつが殺されなきゃならねんだよ。」
「あ、そっか、朝のニュース。」
私はふと朝のことを思い出す。
「みんな私を無視していたんじゃなくて、見えなかったんだ。」
「私昨日、殺されちゃったんだ。」