#97【秋🍁】
彼岸ですよ、と
今年も裏庭から曼珠沙華が教えてくれる。
律儀なことだ。
毒を孕んでいるとは思えない
繊細で真っ直ぐな立ち姿に
今年もまんまと見惚れる。
嫋やかさなど微塵も感じないのに
こんなにも惹かれるのはなぜだろう。
あぁ、あなたのようになりたい。
#96【窓から見える景色】
車の助手席は暇だ。
歌うか、お菓子を食べるくらいしかやることがない。
(異論は認める)
気がつくと私は視界に入った看板の文字を
独り言のように読むようになっていた。
運転手からしてみたら
「話しかけた?え、看板読んだだけ?」という
何とも対応がめんどくさいパターンの所業だ。
ただ読むだけでは運転手に迷惑…
ならば面白く言えばいいんだね?!
そしたら目も覚めるし楽しいし一石二鳥だね!
…と言うことで
次は台詞のように抑揚をつけてみたり
メロディーをつけてCM風に唄ってみたりと
バージョンアップしてみようと
こっそり胸に誓った。
少し遠出をしようと高速道路を走ったある日。
代わり映えのしない景色の中に突如現れる
地名の看板やトンネルの名前、川の名前…
…もう、読まざるを得ない。チャンス到来。
いろんなパターンで声に出してみるが
運転手、まったく笑ってくれない。
ぐぬぬ。手強い。
すると目の前に次のターゲットが現れた!
これは声に出して読みたい日本語267位!!
私は迷わず武士になった!
「拙者、豊田勘八でござるっ!」
…
よくわかんないけど、めっちゃウケた。
運転手のツボがわからない。
#95【形の無いもの】
目に見えないものに拘るのは
重いのか軽いのかもわからない
その形無いものを
心底大切にしたいと
どこかで願っているからなのかもしれない。
失くしても気付かずにいたくないから。
その肌触りを
どことなく感じていたいから。
#94【ジャングルジム】
どこが入口で
どこが出口かわからない
ジャングルジムが嫌い
#93【声が聞こえる】
頭の中に響く声。
私にしか聞こえない声。
本を読んでいる時
考え事をしている時
いま、こうやって何を書こうか悩んでいるとき。
いろんな時に聞こえる声がある。
実際に音になって聞こえるわけではない。
幻聴ともちょっと違う。
自覚を持って聞いている内なる声。
聞こえない人もいるみたいだし
人によっては声色もいろいろと違うらしい。
昔、学校で「心の中で読んでください」と
言われて黙読をしていたが
あの時、みんなの頭の中には
どんな声が聞こえていたのだろう。
聞こえない人は
どんな心持ちで黙読していたのだろう。