海月

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#96【窓から見える景色】


車の助手席は暇だ。
歌うか、お菓子を食べるくらいしかやることがない。
(異論は認める)

気がつくと私は視界に入った看板の文字を
独り言のように読むようになっていた。
運転手からしてみたら
「話しかけた?え、看板読んだだけ?」という
何とも対応がめんどくさいパターンの所業だ。

ただ読むだけでは運転手に迷惑…
ならば面白く言えばいいんだね?!
そしたら目も覚めるし楽しいし一石二鳥だね!
…と言うことで
次は台詞のように抑揚をつけてみたり
メロディーをつけてCM風に唄ってみたりと
バージョンアップしてみようと
こっそり胸に誓った。


少し遠出をしようと高速道路を走ったある日。
代わり映えのしない景色の中に突如現れる
地名の看板やトンネルの名前、川の名前…

…もう、読まざるを得ない。チャンス到来。

いろんなパターンで声に出してみるが
運転手、まったく笑ってくれない。
ぐぬぬ。手強い。

すると目の前に次のターゲットが現れた!
これは声に出して読みたい日本語267位!!

私は迷わず武士になった!

「拙者、豊田勘八でござるっ!」



よくわかんないけど、めっちゃウケた。
運転手のツボがわからない。

9/25/2023, 1:47:16 PM