「僕と一緒に踊りませんか?」
「なにそれ、何いきなり…」
最初の感想はこれだった。
「さあ、早く!」
そう言って、僕の答えは全く聞かずに、彼は僕の手を取って踊り出した。
「はっ?!ちょっと?!僕、まだ何も言ってないんだけど?!」
「いいから!僕に合わせて!」
なんて自由人。
僕は困惑しながらも、彼の動きに合わせて、なんとなく踊ってみる。
「うん、思った通り上手だ。」
「なにそれ、ただ合わせてるだけなんだけど。」
「あははっ!つれないな~」
まあ、たまには悪くないかもだけど。
静寂に包まれた部屋
私は何の音も無い所を知らない。
みんなが静かに感じていても私には音が聞こえてる。
音が無いなんて私には絶対に無い。
と言うか無意識に探しているのかもしれない。
例えば、『シーンとしてる』なら「シーン」と言う音が聞こえてる。
静寂の音
上手く言葉に出来ないけれど。
母校の教室の窓から見える山が好きだった。
田舎の景色。
春は山桜。
夏は山の木々と空が青々と輝き、
秋は所々見える紅葉の朱色が美しく、
冬は少し白くなる。
田舎の好きな所。
やっぱり日本の四季は美しい。
その人は、朱色の美しい紅葉の中にいた。
ただ静かに紅葉を眺め愛でる姿が、今まで見た何よりも美しかった。
まるで時が止まったようだった。
なんて美しい人だろう…紅葉の中に消えてしまいそうだ…
この世のものとは思えない美しさに、思わずへたりこんでしまった。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です…!お気になさらず…!」
「足元、お気を付けて」
あまりの衝撃に、まともに話せていたかわからない。
慌てて立ち上がりお礼を言うと、その人は秋の風のように爽やかな笑みを残して紅葉の中に歩いて行った。
紅葉の朱色が似合う
秋の空のように澄んだ瞳をした
風のように爽やかな人
これは、とある秋の日の密かな恋の話。
軽自動車の後部座席でウトウトしながら窓から見つめるのは、
すこし眩しいネオンの夜景。
「都会だなぁ…」なんて思いながら、いつもは通らない道を通る。
いつもより、ちょっと特別な夜のドライブ。
不思議な感覚。なんだか大人になったみたい。
「このまま寝たら、何かいい夢見れるかな?」