その人は、朱色の美しい紅葉の中にいた。
ただ静かに紅葉を眺め愛でる姿が、今まで見た何よりも美しかった。
まるで時が止まったようだった。
なんて美しい人だろう…紅葉の中に消えてしまいそうだ…
この世のものとは思えない美しさに、思わずへたりこんでしまった。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です…!お気になさらず…!」
「足元、お気を付けて」
あまりの衝撃に、まともに話せていたかわからない。
慌てて立ち上がりお礼を言うと、その人は秋の風のように爽やかな笑みを残して紅葉の中に歩いて行った。
紅葉の朱色が似合う
秋の空のように澄んだ瞳をした
風のように爽やかな人
これは、とある秋の日の密かな恋の話。
9/22/2023, 3:55:14 AM